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佐賀県の陶芸作家
 
作家写真 酒井田柿右衛門
(有田町)
酒井田柿右衛門・1934年有田町生まれ。多摩美大日本画科卒。82年に14代柿右衛門を襲名。84年日本陶磁協会賞受賞、86年と92年の日本伝統工芸展で「日本工芸会奨励賞」を受賞。97年に県陶芸協会会長に就任。日本工芸会理事。日本工芸会西部支部幹事長。九産大大学院芸術研究科専任教授。
竹林やカシに覆われた小高い山のふもと。広大な敷地内に、柿右衛門窯の工房やヨシぶきの家屋が並び、玄関付近の池にはニシキゴイが泳ぐ。そよぐ風に秋の気配が漂う庭園は、カキの葉が色づきはじめ日本の美の情景を見せる。
「伝統ある有田では一人の作家という前に職人であるべき。伝統を踏まえながら自分の色を出していきたい」。江戸時代から連綿と続く名門「柿右衛門窯」の14代柿右衛門さん。一言一言に、窯主としての使命感がにじむ。

「柿右衛門」という言葉は色絵磁器の代名詞ともいえる存在。乳白色の生地と明るく鮮やかな上絵付けが特徴。余白を生かした華麗で優美な色絵の世界だ。14代を襲名して18年。「新しい食器、デザインはそこそこやってきたが、美術品よりも日常使う器の方が難しい」という。時代のニーズを踏まえた日常食器づくりを心がけ、最近はイチゴやエノコログサを見つけては絵筆を走らせる。

一年に5、6回ほど雄大な自然に囲まれた阿蘇に出かける。世俗的な世界を逃れ自分の内面を見つめるため、キャンピングカーを駆っての一人旅。一週間ほどの滞在。「ふだんは目にとまらなかったものが見えてくる。はいつくばるような感じでふらふらになりながら、心に感じるものを写し取っていく」。自分を追い込んで、新鮮に映る野のタデやコスモスを描く。

様式の継承と新たな日本の美の追究は名門窯の当主の宿命だ。「やはり余白を残すことが大事。絵のバランスとともに白の美しさを損なわないように」。山や草花をモチーフにしながらも14代としての独自色を出していく。

一子相伝といわれる絵の具の調合が課題だという。「化学顔料や安定した釉薬(ゆうやく)は手に入りやすいが、色に深みがなく素朴な美しさが出ない。戦後、業者が減り、質の良い天然のものが少なくなった」と嘆く。

大英博物館で開催される県陶芸協会展が間近に迫った。「佐賀の現代の陶芸文化を世界に発信したい」。県陶芸協会会長を務める柿右衛門さんはそう意気込みを語る。

柿右衛門展を海外で開く度に「有田はどうなっているの。もう焼き物は作っていないのか」と海外作家からよく質問を受けたという。同展では作家62人の優品124を展示。「今の有田の作品をきちんと見せたかった。レベルの高い作品がそろい、中国にないものがあるのでインパクトが強いはず」と自信をのぞかせる。

新世紀を間近に控え、世界のひのき舞台に立つ佐賀の陶磁器。現代の創造性を盛り込んだ個性豊かな作品の数々は、江戸期の海外輸出から三百年余りの時空を超えて、世界が注目する大英博物館に、佐賀の陶芸文化の足跡を記す。
出展作品
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濁手桜花文八角鉢

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濁手さるとりいばら文蓋物

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■柿右衛門窯(かきえもんがま)
西松浦郡有田町西部丁352
JR有田駅から車で7分。柿右衛門入口バス停から徒歩で10分。
展示場と古陶磁参考館あり。駐車場約30台収容。
電話0955(43)2267
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。
※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。
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