本年、2004年は日本を代表する洋食器ブランドのノリタケ創業100周年にあたります。ノリタケの創業者のひとり、森村市左衛門は、自ら食器を製造して輸出するため、1904年(明治37年)、ノリタケカンパニーの前身となる「日本陶器合名会社」を、愛知県下則武に創立しました。森村はその前に貿易商社「森村組」を1876年(明治9年)に設立して、弟の豊をニューヨークに派遣し、雑貨商「モリムラブラザーズ」をスタートさせていました。明治維新後の不平等な貿易慣行を打破し、日本を繁栄に導くのが目的でした。
やがて森村は海外で通用する白色硬質磁器のデザイナーセットの開発に着手し、困難を乗り越えて1914年にようやく完成させます。熱い志を持って困難に立ち向かった明治期の日本人の気骨を感じさせる物語と申せましょう。
ノリタケは、過去においても現在においても、わが国最大の食器メーカーであり、生産量とその製品の品質の高さによって、他に影響力を持ち続けてきました。残念ながら戦災によって多くの資料が失われましたが、その製品は裏印によってある程度制作年代が特定できる利点があります。したがって、ノリタケの20世紀初頭から戦前にいたる期間の製品を通観することで、近代日本の洋食器文化の変遷をたどることが可能となります。
本展は日本洋食器の変遷を文化史的な視点から収集してきた守屋知子氏のコレクションより秀作100点余りを精選し、ノリタケ、および同時代の食器メーカーの製品を通じて、わが国における洋食器文化の定着と発展にいたる軌跡を展観するものです。ヨーロッパの様式を学習することにはじまり、流行とともにラスター彩を用いた虹色に輝く豪華な装飾から、こまやかで繊細な日本伝統の文様による後期の作例まで、幅広いノリタケの魅力をご堪能ください。 |