唐津焼は室町時代、肥前・松浦地方を中心に割拠した武士団である松浦党が、朝鮮から連れてこられた陶人たちによって創始されたという説や、それ以前に中国江南地方から伝えられたという説など、その起源に関しては諸説ありますが、未だ謎も多く研究が続けられています。桃山時代後期から江戸時代初期にかけて、茶の湯の流行とともに唐津焼は飛躍的な発展をみせ、素朴な土の風合いと簡略化された絵付けを特徴とする作風が多くの茶人に愛されました。この時期に生み出された唐津焼は「古唐津」と呼ばれ、現在も多くの陶芸ファンを魅了しています。
唐津では五代中里喜平次らが、享保19(1734)年唐津藩大井炊頭利実の命により、坊主町から現在の唐人町へ藩窯を移し、御用窯『御茶わん窯』を築きました。この窯で焼かれた作品は「献上唐津」と称され、窯は廃藩後も十一代中里天祐(1924年没)まで使用し、今日も昔ながらの完全なかたちで中里家に保存されています。
2004年は享保19年旧暦11月15日に行われた窯の移動から270年目にあたります。これを記念して重要文化財2点を含む古唐津の名品と中里無庵(十二代中里太郎右衛門、1985年没)を中心に当十四代までの太郎右衛門窯歴代の名品約70点ずつの合せて約140点を一堂に展観します。
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