古九谷や再興九谷(吉田屋窯など)の九谷焼作品は、現在ではややもすると鑑賞のみの対象として持て囃される傾向があります。近現代作家の九谷焼作品ともなるとその傾向はなお一層強くなるようです。しかしながら、名品といえども本来、用いるための器としてこれらの九谷焼は生まれてきたのです。その器の上に濃厚な九谷特有の色絵付けが施されることによって、装飾性が高められているのは確かなことです。つまり、器としての優れた造形美と観る者の魂を揺さぶるような色絵の装飾美が共鳴しあって<華やかなる用の美>をつくりだしているのです。
こうした用の美の視点にたって、色絵九谷の優品の数々を見直していただこうとするのが今回の企画です。酒器や懐石用具としての皿鉢類を中心に茶の湯や飲食などに関わる九谷の器を集め、<用いること>をイメージできるような展示をはじめて試みてみました。この企画展示が九谷焼に親しみを持っていただける一助となれば幸いです。
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