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香りを楽しむ焼酎グラス「香酒盃」
 昨年(平成16年)の有田陶器市では「究極のラーメン鉢」が人気を博し、皆さんの記憶にも新しいと思います。様々なメディアが採り上げ話題を提供しましたが、今年の有田陶器市で話題を提供した商品が少なかったようです。しかし、その中でも静かにヒットした商品がありました。それが「香酒盃」とネーミングされた焼酎グラスでした。
 今年の有田陶器市でテスト販売として初お目見え。2種類の形状があり、各窯元でそれぞれに幾つかの絵付けをほどこされていました。そして商品が置かれている棚の上には「究極の焼酎グラス『香酒盃』」のPOP。後で聞いたところでは、売り切れた商品もあり、慌てて補充したものも多かったそうです。「香りを楽しむ」というコピーと何種類もの絵付けがされた楽しさが人気を集めたのだろうか。
 そこで、今回は「香酒盃」を開発した陶"楽座(どうらくざ)の開発・広報担当でもある李荘窯代表の寺内信二氏に開発の経緯をインタビューしました。


―最初に、ラベルに書いてある「陶"楽座」とは何ですか?

寺内氏 10年前に気心が知れた仲間7人でつくった結社です(笑い)。有田焼窯元の福珠窯さん、伝平窯さん、渓山窯さん、瑞峯窯さん、順天窯さん、文翔窯さん、李荘窯、それと後から参加した陶悦窯さんを加えて、今では8窯元で次の市場を模索しながら新商品開発や企画を行っています。

―今まで、陶"楽座ではどういう活動をされてきましたか?

寺内氏 東京の大丸さんで6ヶ月間コーナーをお借りして、統一テーマのもとに各窯元が月替わりでミニコーナーを設け展示をしたり、有田ポーセリンパーク内に共同で「器咲」というショップを運営しています。実は究極のラーメン鉢もこのメンバーが中心となって開発しました。

―今回、焼酎カップを開発されたわけですが、なぜ焼酎カップだったのですか?

寺内氏 以前は、焼酎は労働者が湯呑でのむというのが一般的なイメージでしたよね。今でこそ、市民権を獲得し焼酎バーなども増え、多くの焼酎が開発されていて、若い世代や女性にも浸透しています。しかし、焼酎を入れる器は代用品であったり、いろいろな焼酎カップが作られていますが、「これぞ専用の焼酎カップというのがないよね」ということでスタートしたんです。

―焼酎カップを開発されるうえで、一番苦労されたことはなんですか?

寺内氏 うーん、やはりコンセプト、切り口を決めるのに苦労しました。開発するにあたって、地場の酒造メーカーである窓乃梅酒造さんや宗政酒造さんにレクチャーを受けにいきました。焼酎を造られる際の思いやこだわり、最近の流行などを聞くうちに「香り」というキーワードが浮かび上がってきました。ワインやブランデー、シャンパンなどには専用のグラスがありますが、これらのグラスというのはまず香りを楽しみますよね。ワインだとグラスを回して香りをたたせ、ブランデーは手の上でグラスを回しながら温めて香りを引き出しますね。
それと同じように焼酎でも香りを楽しめるグラスがあっていいじゃないかと思いました。その間、何度もメンバーと連れ立って酒造メーカーさんや焼酎バーなどに行き、飲み較べましたね。私はもともと日本酒党でしたが、家でも酒を焼酎に変え、毎晩色々な焼酎を飲み干しました(笑い)。焼酎自体も蒸留の仕方が変わってきて、焼酎の「匂い」が「香り」に変わってきたということで、「香り」を切り口に商品開発をしようと決定したわけです。それで「香酒盃」というネーミングをしました。

―なるほど、それで香りを引き出すために口を絞った形になったんですね?

寺内氏 そうです。日本酒でも大吟醸を飲むグラスというのが作られているのを知っていますか。(と言ってリーデルの大吟醸用のグラスを持ってこられ)ワイングラスとは微妙に曲線が違うんですよ。この焼酎カップは口に持ってくると、ちょうど鼻がカップの口に入るように設計されています。これでより香りを楽しんでもらえると思いますよ。
それと、この小さい方はロック用で開発したものですが、他にもいろいろと工夫しています。先ず、焼酎バーなどで使われている丸い氷の大きさは6cmですが、この大きさの氷がすっと入るようなつくりにしています。それと氷がカップの中を転がって、キレイなコロコロという音がするように内側の底、および胴との境目を丸くしています。
次に、カップの底は三つ足にしました。焼酎を飲んでいるとグラスに結露がつき、コースターとグラスがくっついてしまいますよね。それを知らずにグラスを持ち上げると、一緒にコースターまでくっついてきて、カチャーンと落としてしまうでしょう。三つ足にすればくっつかないし、空気が通って結露もすくない。
それと、持ちやすい工夫も考えました。胴のくびれを入れて指で押さえることができるようにしています。それと三つ足なので丸い窪みに指を置けばカップを安定して持てます。

―なるほど、でも女性には大きいですよね。

寺内氏 ちゃんと作っていますよ。(と笑いながら、女性用を持ってこられ)ほら、これで、ギフトにも使えますよ。このロック用はほぼ完成していますが、お湯割り用につくった大きいほうはまだまだ改良の余地があります。今後使う人の意見を聞きながら両方とも改良していくつもりです。

―ところで、今回8軒の窯元さんで作られたわけですが、全部で何種類ぐらいの商品ができたのですか?

寺内氏 そうですね、60種類以上だと思います。
―有田陶器市ではテスト販売だったということですが、価格帯は幾らから幾らぐらいになりそうですか?

寺内氏 白磁などが1,500円から、絵付けが入って2,000円から6,000円位までの予定です。

―発売開始はいつ頃ですか?

寺内氏 年明けになるかもしれないですね。

―それまでは、どういうことをされるのですか?

寺内氏 実は「究極のラーメン鉢」の教訓として自発的に行うプロモーションのまずさがあったと思います。あの時はNHKさんにおんぶに抱っこという感じだったんですね。今回自分たちでやろうとした時にあれもしなくちゃいけない、これもしないといけないよね、といろいろでてきました。もともと有田はプロモーションが苦手なところなんですね。そこで今回はそれぞれの窯元のネットワークを最大限利用して、いろいろな団体やスキルを持っている人々と一緒になって様々な仕掛けをやっていこうと思っています。

―よければ具体的に教えていただけますか?

寺内氏 実は6月16日から8月の末まで、福岡市のイムズ地下2階で展示即売を兼ねたプロモーションを行います。期間中の6月25日(土)午後3時から4時まで同じ場所で窓乃梅酒造の古賀社長によるお酒と器のトークショー&試飲会を開催します。古賀社長には焼酎造りのこだわりや香酒盃との関わりを話していただく予定です。参加は無料ですので、是非参加してください。
また、7月17日・18日には飲食業の方を対象に試飲会をイムズ7階の佐賀県福岡情報センターで開催します。これには一般の方もご参加いただけまし、週末にも定期的に試飲会を予定していますので、皆さんに参加してほしいですね。
他には秋口に有田で焼酎フェスタを行おうと思っています。九州は焼酎王国ですからいろんな仕掛けを考えていきたいですね。特に佐賀の産品およびその生産者やメーカーとのコラボも考えながら様々な仕掛けを考えていきます。

―最後に、「香酒盃」も含めて今後の商品開発の思いをお聞かせ願えますか?

寺内氏 私たちはやきものではなく、「食器」をつくっているわけですから、やはり「食」を知らないといけないと思いますね。自分で料理をつくって器に盛ってみて初めてわかることがあります。実は私も料理が好きで、仲間を集めて時々振舞うんですが、これがめちゃくちゃで、大変なんです(笑い)。
そばも打ちますが、こう見えてもぶり大根やたけのこの煮付けが得意なんですよ(笑い)。有田では器をつくって売っているんですが、食が今まで足りなかったと思っています。有田の食文化をつくっていく上で、少しでも貢献できればと考えています。そのためにも、一歩でも先行く商品開発をこころがけ、有田しかできないことを企画していきたいと思っています。


うまか陶では、今後「香酒盃」という商品がどのように成長していくのかプロモーションも取材しながらお伝えしていきます。




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