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日韓特別企画展 吉野ヶ里遺跡と古代韓半島
<会期:平成20年1月1日〜平成20年2月11日>
平成20年1月11日

 佐賀県の各美術館・博物館施設は、お正月休みの方や帰省客にも佐賀の文化・芸術に親しんでいただこうと、元旦から開館されています。
佐賀県立美術館では、お正月の特別企画として、「日韓特別企画展 吉野ヶ里遺跡と古代韓半島」が開催されています。この展覧会、実は平成19年の秋冬に韓国にて開催されたもので、帰国展として佐賀で開かれるものです。
 佐賀県には全国的にも有名な吉野ヶ里遺跡がありますが、この遺跡を中心とした県内の出土物からは日本と韓国の長い交流の歴史を読み解くことができます。この展覧会ではそうした交流の歴史を紹介するもので、佐賀県内からの出土品に加え、韓国出土の遺物を比較展示。弥生時代の佐賀と韓国との親密であった交流の歴史をかいまみることができます。

 様々な出土物が紹介されていましたが、わたしはやきもの、つまり土器を中心に鑑賞。その様子をレポートいたします。

 弥生時代というと「稲作がはじまり、青銅や鉄といった金属の道具を使うようになった文化がはじまる」ということが一般的によく知られています。これらの水田農業や金属を使う文化は、韓半島から北部九州へ伝わったものだそう。その中でも韓半島からの渡来人が多く移り住み、稲作を発展させ、金属の道具を日本で初めてつくったのが、佐賀地方だと研究されています。
 会場では韓半島と佐賀の出土品が並べて展示されており、当時の佐賀の人々の暮らしが韓半島の文化から色濃く影響を受けたことがわかります。

左が韓国の丹塗磨研土器 右が久保泉丸山遺跡から出土した壺

 まずは稲作が始まった頃の土器を見ていきましょう。
佐賀の久保泉丸山遺跡から出土した壺類を中心とした土器が並びます。その横には、韓国の壺形土器「丹塗磨研土器」というものが展示されます。ふっくらとした形、装飾のないシンプルなつくりは双方とてもそっくりです。この磨研土器というものは、成形時に表面を石で磨いて作られたもの。土肌を磨くことで表面がつるりとなめらかに仕上がります。会場では器の表面を虫眼鏡で観察することができるコーナーもあり、その表面のなめらかさを実感できます。

▲佐賀県で出土した
     組合式牛角把手付壺
 また韓半島から伝わった土器で「無文土器」と呼ばれるものもあります。ゆったりとした独特のバランス。また牛角把手と呼ばれる角のような飾りがあるものもあります。
 韓半島に近い、福岡を中心とした玄界灘沿岸でもこの無文土器が出土するそうですが使われていた期間は短く、佐賀地方では長期にわたる各種遺跡から出土するそう。
 これらの出土状況をみて、弥生時代には佐賀に韓半島から移り住んだ人が最も多く、その文化を発展させたのだと推測されます。移住者が多かった要因としては、農業に適した広くて肥沃な平野、それに豊富な水源が佐賀にあったためだと考えられているそうです。
 土器の出土状況や、韓半島との出土品とを比較研究することで、土器そのものの技術や使用背景だけではなく、人々の移動状況や文化の伝来や発展過程まで知ることができるのですね。

▲吉野ヶ里遺跡の祭祀土器
 弥生の人たちは、農業を営む中で様々なまつりを行っていたようです。弥生時代の集落跡からは穀物の霊魂や新しい文化をもたらしてくれるシンボルである「鳥」の絵や木製品が出土します。まつりで使用された道具のようで、同じような鳥形の遺物が中国・韓国はもとよりタイ・ベトナムといった東アジアの遺跡からも出土するそう。
稲作文化が中国から広まっていく過程で、まつりの道具や文化も伝わったのだと考えられているそうです。

 まつりの時に用いられた道具として「祭祀土器」と呼ばれるやきものがあります。大型の筒形器台や高杯、広口壺など。これらの祭祀土器は集落の広場の穴からまとまって出土したり、またお墓の土坑からも出土するそうです。農業に関するまつりのほか、死者を葬るまつりにも用いられていたのでしょうか。
▲韓国出土の祭祀用小型土器
 では韓半島のまつりはというと、まだ明確には解明されていないそうです。しかしながら鳥の木製品など日本のまつりとの共通するものが出土しています。土器はというと、とても小さなミニチュア土器が使われていたようです。どれも片手にのるほどの小ささ。どのように使われていたのでしょうか?

▲韓国で出土した弥生系土器
 土器はもちろん、金属器など日本の発展に大きな影響を与えた韓半島文化ですが、この逆もあったとか。
 実は日本の弥生人が作っていた青銅器や土器が韓半島から出土することもあるそうです。韓国からは北部九州系の弥生土器なども出土しており、その当時お互いが往き来して交流が盛んに行われていたことがわかります。

 このように土器だけを見ても、弥生時代の韓半島と日本の深いつながりを知ることができます。もちろんこの他にも青銅器や銅剣などの金属器も多数展示されており、幅広い視点で文化交流とその発展を見渡すことができました。

 のどかなイメージが強い佐賀地方ですが、弥生時代はこんなに活発な発展を繰り広げていたのだなと改めて驚きをもちました。私たちは一体どこから来て、どのようにくらしてきたのか。大きな視点で鑑賞してみてはいかがでしょうか。


●お知らせ 
この特別企画展を記念して、博物館の常設コーナーでは韓半島とつながりの深い所蔵品が特別公開されています。その大きさに圧倒される重要文化財の楊柳観音像は必見です!

●佐賀県立美術館・博物館
【所在地】
佐賀市城内1-15-23
【電 話】
0952-24-3947
【駐車場】

【休館日】
月曜日