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■青磁名宝展
 ―過去から現代まで―

<会期:平成13年8月18日〜平成14年5月31日>
平成13年9月17日

美術館外観photo こちら佐賀平野はまだまだ昼間の日差しは強いのですが、からりとした爽やかな秋風を感じられるようになりました。澄み切った青い空の下、秋風に稲がたなびく田んぼのあぜ道には、真っ赤な彼岸花が咲き始めていました。今回訪れた財団法人陽光美術館は武雄市にある山を背にした美しい日本庭園と隣接しています。陽光美術館は中国の古陶磁や翡翠・玉などを中心に所蔵している美術館で、今回は企画展として長い歴史を持つ青磁の特性や美しさを感じてもらおうと「青磁名宝展」が開催されていました。財団法人陽光美術館・天達(あまたつ)さんのお話を伺いながら、展覧会を鑑賞しました。

 会場に入ると、陽光美術館所蔵の中国古陶磁の青磁作品14点が時代順にずらりと並んでいます。また現代陶芸界で青磁作家として第一人者である、中島宏さん(武雄市)の作品13点も展示されていました。「中国の青磁作品の歴史を追いながら、その変貌と作品の魅力に触れていただき、また現代作家の中島先生が表現する青磁の世界を楽しんでいただけるのが見所ですね。」とは天達さん。美しい青磁は古来中国で「秘色青磁」と呼ばれ、非常に尊ばれていました。
青磁四耳壺  時代順に並べられている青磁は技術の発展や、その時代の流行などでそれぞれ色みが違います。唐代(618〜907年)の青磁として展示されていた「青磁四耳壺」は、ぱっと見は白釉をかけた陶器のようです。天達さんによるとこの頃はまだ還元焔をコントロールできず、この時代の多くの作品がオリーブグリーンのような色をしているそうです。そして南宋(1127〜1279年)に入ると、とても神秘的な青い色の作品が見られます。 青磁六角管耳瓶 「青磁六角管耳瓶」はシャープな器形ですが、どこかずっしりとした重みを感じさせる作品です。これは郊壇官窯でつくられたものだそうですが、官窯とはいわゆる御用窯のこと。この作品、装飾は施されていませんが、表面には大きめの貫入が入っているので、リズム感を感じさせます。「青磁はもともと玉(ぎょく)をつくりだそうとした説があります。」天達さんのご説明を聞いて、どっしりとした不思議な重みを感じた理由は、それだったのかもしれません。先人の思いを込めたものが、我々にも伝わってきているのでしょうか。

 時代が下っていくと彫りを施した作品なども見受けられました。その中でもおもしろい装飾だったのが「飛青磁玉壺春瓶(元1279〜1368年・龍泉窯)」という作品です。 飛青磁玉壺春瓶 作品のところどころに、濃い赤茶色の斑点がありますが、どの角度から見てもとてもバランスよく配されています。「これは偶然できた装飾なんですか?」と天達さんにお尋ねしました。「いえいえ、これは鉄斑文と呼ばれるもので、この斑点は鉄釉を施しているものなんですよ。元時代を中心にみられる技法です。」天達さんの解説に、なるほどと思いながら、もう一度作品を丹念に見ました。それぞれの鉄釉部分から放射状に貫入が出ています。鉄釉の色があることで、青磁の薄く透明感のある青色がさらに澄んで見え、表面のしっとりした輝きが引き立っています。
青磁人形鉢  「ちょっとユーモラスな作品もあるんですよ。」と天達さんにご紹介していただいたのは「青磁人形鉢(明・1368〜1644年)」という口径約40cmくらいの大きな鉢です。鉢の口縁や、見込み内には岩に見立てられた部分に人形がたくさん配されています。見込みの中央には、大きな魚が配されています。まるで人形達は、「魚をとろうかな」「どうしようかな?」と水の中をのぞきこんでいるようです。
青磁双耳瓶  清の雍正期時代になってくると、宋の官窯の青磁を模倣したつくりが盛んになるそうです。清(1644〜1912年)の作品として展示されていた「青磁双耳瓶」は青というより白に少し青味が入ったような色合いをしています。

青瓷彫文掻落花器  現代の青磁作家として、佐賀県重要無形文化財にも指定されている中島宏さんの作品も鑑賞できました。中島さんの作品はどれも、造形が美しく、光によって様々な表情を醸し出す魅力があります。「青瓷彫文掻落花器」は器全体に波を思わせるような彫りが施されています。彫りに溜まった釉や、彫りでできる影によって、器がざわめいているような生命感を感じます。またライトの方向によっても影が変わるので、見る角度によって違う表情があります。

美術館の窓から見た庭photo 美術館奥には美しい庭園が広がり、秋の光を館内にも伝えていました。青磁という、青とも緑とも白ともいえない、神秘的な美しさを庭の光が静かに演出しているようでした。展示はこの他にも翡翠でつくられた宝物なども常設されており、中国の工芸美を堪能できます。陽光美術館では係りの方の詳しい説明を聞きながらの鑑賞もできるとのことです。ぜひ皆さんも、秋のお出かけルートに加えてみてはいかがでしょうか。

■取材雑記
 美術館鑑賞をした後は、隣接している日本庭園「慧洲園」の見学もできます。美しい苔やもみじ、茶畑が広がるこの庭園は名作庭家として知られる中根金作によるものだそうです。もう少し秋が深まると紅葉も楽しめるそうです。

●財団法人陽光美術館
【所在地】武雄市武雄町武雄4075-3
【電 話】0954-20-1187
【駐車場】
【開館時間】9:00〜17:00