トップ >> やきものコラムセラミック九州 >> VOL.38 猫文

やきものにみる文様VOL.38 猫文(ねこもん)
▲染付猫牡丹文輪花大皿
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵(柴田夫妻コレクション)


  猫は愛玩動物として平安時代に飼われていたことが「枕草子」にもあらわされています。姿が美しく魅力的な動物ですが、霊的な力があると信じられ、日本ではさまざまな怪談にも登場します。このような傾向からか猫は日本の文様として決して多いものではありません。しかし文様の宝庫、古伊万里には猫の文様のものもみられます。
 猫と蝶、そして牡丹の組み合わせは、長寿と富貴をあらわす文様です。この文様構成とその意味は中国から伝来しました。猫は同じ音の「耄(おいぼれ)」(中国語ではマオと発音)を象徴し、蝶は「耋(としより)」(中国語ではティエと発音)を象徴することから、猫と蝶の組み合わせは「耄耋(ぼうてつ)」という言葉につうじます。「耄」は70歳のこと、「耋」は80歳のことともいわれています「耄耋」という難しい言葉は現代日本人にとってピンときませんが、「解体新書」をあらわした蘭学者杉田玄白は84歳の時、苦境の肉体的苦労を語った「耄耋独語」という随筆を著しています。
 下にあげた<染付猫牡丹文輪花大皿>は、中央に丸くなった猫を染付で描き、陽刻の文様で周囲に牡丹と蝶をあらわしています。この皿をみて、「長寿と富貴」の意味を汲み取ることができる人はなかなかの文様通といえるでしょう。文様通のこのお皿の所有者は、猫と牡丹と蝶が豊かな老後を象徴するものであることを話のたねにしながら、食事を楽しんだことと思われます。(藤原友子)

参考文献:王敏・梅本重一編「中国シンボル・イメージ図典」2003年 東京堂出版

佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No45号より(平成21年発行)

■写真…染付猫牡丹文輪花大皿
(柴田夫妻コレクション)
C佐賀県立九州陶磁文化館館
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます