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VOL.32 桜花(おうか)文様 | |
『日本国語大辞典』(小学館)によると、さくらは「バラ科サクラ属のうちの一群。おおむね落葉高木。北半球の温帯ないし暖帯に分布し、特に東アジアに多く、数十の野生種がある。花はふつう春に咲き、葉の展開に先立って開くことが多い。淡紅・白などの美しい五弁花で、八重咲きのものもある。古くから和歌や絵画に取り上げられ、現在は日本の国花とされる。」と記されています。
和歌に「世中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平)」(古今―春上・53)詠まれているように、桜花は私たちの心得を「のどかさの」反対の境地である「狂おしい」ものにさせ。短期間のうちにいっせいに花開き、そしていっせいに散ってしまう。なんともきぜわしく、気がかりであります。 桜樹そして桜花の文様は肥前磁器にはよく見かけます。柿右衛門様式の作品、古伊万里金襴手様式の作品、そして鍋島藩窯の作品には丁寧にそれらを描いたものが多くあります。 この作品は鍋島藩で制作された色絵のついた「色鍋島」の七寸皿で、しっかりと根を張った桜樹を染付の輪郭線で描き、幹そして枝と丁寧に呉須で濃み塗りしています。桜花と葉はそれぞれ染付の線描きをして、その上に桜花は赤、葉は緑と黄の上絵具で彩っています。 画面に桜樹をめぐらすこの構図は、専門絵師によって描かれた鍋島の図案帳に同様のものがあります。(『鍋島藩窯の研究』鍋島藩窯調査委員会編・昭和29年発行・97頁)それによると、この図の側に記されている「享保三戊戌」の墨書きによってこの図が享保三年(1718)頃に描かれたと考えられます。 (吉永陽三) |
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