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VOL.30 ウィレム4世肖像 | |
ここに挙げている色絵瓶は、昭和58年に佐賀県立九州陶磁文化館の所蔵となった<色絵ウィレム4世像瓶>である。白磁の瓶に色絵で、横向きの西洋人物が描かれているが、これはオランダで絵付けされたものである。このように、有田製や中国製の白磁製品を輸出先のオランダで上絵付けしたものが見られる。付加価値をつけて更に販売しようとしたものであろうか。主に18世紀の中頃に絵付けされたものとされている。
この作品は、描かれている人物をオランダの独立戦争に功績のあった、フレデリック・ヘンドリック(1584-1647)と考え、<色絵フレデリック・ヘンドリック像瓶>と紹介されてきた。しかし、「古伊万里の道」展への出品にあたって、作品を再確認したところ、描かれている人物の風俗が17世紀前半のそれではないことから、疑問が浮上した。改めて記されている文字を解読したところ、描かれている人物は1747年にオランダ全州の総督に就任したウィレム4世(1711-51)であることが判明した。 アムステルダム歴史博物館には、同じくウィレム4世肖像を描いた中国磁器の皿があった。このようなウィレム4世肖像を描いた工芸品が存在する理由は、当時のオランダ政治情勢が背景となっている。オランダは、ウィレム3世(オランダの総督でありイギリス国王)の1702年の死後、総督不在の時代であったが、1740年代のフランス軍による侵攻に対抗するため、再びオラニエ公から総督をかつぎだす動きがおこった。ウィレム4世の肖像が磁器に描かれるようになったのは、こうしたオラニエ公の支持者の意向を反映したものである。現在のオランダ王室はこのウィレム4世の直系の子孫にあたる。 (藤原友子) |
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