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VOL.24 婦人図、婦人文様 |
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婦人図は、染錦手のものに伝世品が多く知られ、伝世品の多くは海外へ輸出されていたものである。婦人図は、装束、風貌が異国情緒を満たすものであることから、海外輸出品として好まれた文様のひとつであったと想像される。幕末から明治にかけての輸出品に、武者絵など日本的な人物像が多く見られるのも同様の理由であろう。
描かれた婦人図はその当時の風俗を反映していると考えられるが、古伊万里の文様のほとんどが、現実世界を忠実に再現するものというより、むしろ巷に流布している流行の文様を採用し、組み合わせて多様な文様世界を創造していることに留意しなければならない。古伊万里の婦人図は初期浮世絵にみられる婦人図の描き方に共通項が多い。菱川師宣(?−1694)によって確立した初期浮世絵は、木版刷りの挿し絵や絵本を媒体として延宝、天和、貞享期に全国へ普及した。古伊万里の文様にみられる婦人図も、一般へ流布しはじめていた浮世絵が手本であったと考えられる。古伊万里にみられる婦人図と唐人図とでは同じ人物表現であってもかなり異なっている。これは、唐人像が輸入中国磁器を手本にし、中国磁器に描かれることのない日本人像の手本は浮世絵にあるからである。 挿図の婦人図は<傘持ち美人>という呼称でよばれる図様である。同種の図様ではコルネリス・ブロンク(1691−1759)の1734年のデザインによる注文制作品が有名である。挿図と同じ図柄の伝世品は、ドイツのヴァイセンシュタイン城の沈香壷と筒形瓶のセットが知られる。 (藤原友子) |
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