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VOL.23 鶉文様(うずらもんよう) | |
鶉は秋に渡来し、平地の草原、稲田に群れをなして棲むキジ科の鳥である。草深い野の情景を連想させる鶉は万葉の時代から詩に詠まれ、「鶉鳴く」は「古りにし里」にかかる枕詞となった。さらに秋という季感が鶉に伴うようになり、「夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里」藤原俊成(『千載集』巻四秋上 二五八)の歌に詠まれるような荒涼とした秋の野辺のイメージが鶉に定着する。
鶉図が画題として現われるのは宋元画の影響以降である。とりわけ、日本に請来され東山御物となった伝李安忠(1119−62頃の宮廷画院に活躍)筆の<鶉図>(国宝 根津美術館蔵)は有名であり、こうした中国院体花鳥画を学んだ土佐派の画題として鶉はしばしばとりあげられた。鶉に秋の野を連想することは既に定着していたことから、鶉は秋の風物(薄、菊、粟、麦、月、秋草など)と共に描かれ、なかでも実りの穂を垂れた粟と鶉はもっとも好まれた組み合わせであった。 やきものの文様としては「粟鶉」文が、古九谷様式、柿右衛門様式の優品に見られる。柿右衛門様式の色絵粟鶉文様が、マイセン、シャンティー、ボウ、などのヨーロッパの窯でコピーされたことは広く知られるところであるが、古伊万里の文様に登場する鶉は「粟鶉」だけではない。「菊に鶉」、「秋草に鶉」などの定番の組み合わせのほか、「杉菜に鶉」、「棕櫚に鶉」などがある。 写真の「杉菜に鶉」文は鶉が秋の季感をもつものであることを無視し、春の風物である土筆と杉菜に鶉を組み合わせた文様である。 (藤原友子) |
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