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VOL.20 霞文様(かすみもんよう) | |
「桜 桜 やよいの空は 見渡すかぎり 霞か雲か においぞいずる いざやいざや 見に行かむ」 幼い頃に口ずさんだこの曲は筝曲のひとつにして作者不明という。明治年間に文部省が歌詞をつけてひろめた。この写真にみる壺の図柄は桜の花に霞を配したもので、この歌にピッタリのものである。 霞は空気中に広がった繊細な水滴やちりが原因で、空や遠景がぼんやりする現象。また、霧や煙がある高さにただよって、薄い帯のように見える現象。 大和絵で時間的経過、場面の転換、空間の奥行きなどを示すために描かれる雲形の色面で、その形式も時代によって変る。 平安時代には霞自体の定まった形体はみせないが、鎌倉時代に入ると、次第に輪郭の明瞭な特定の形体をとり始め、横楕円形や、上下辺を横長く水平に引き、頭部をまるくし、他端はやはり曲線でくくるか淡くぼかす。さらに頭部を長く突出させた「すやり霞(がすみ)」と呼ばれる形体、また弧線を連続させた雲形などが形式化していった。 近世に入ると、金色や霞や雲の中に盛り上げの手法で種々の文様を表わし、装飾性はいっそう強くなった。 (吉永陽三)
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