トップ >> やきものコラムセラミック九州 >> vol.12 亀甲文様

やきものにみる文様VOL.12 亀甲文様(きっこうもんよう)


 六角形は自然の形状のひとつとして目にとまる。蜂の巣の単位、亀の甲羅の単位、雪の結晶の基本的な形などである。亀甲文様の名は亀の甲羅に似るところから名づけられているが、その文様の起源が亀の甲羅に由来するかどうかはわからない。エジプト第19王朝BC.1205年頃のシフタハ王墓の天井画「魂を迎える二女神」や、第19王朝のセンネジェムの墓あるいは第19-20王朝のイリネフェルの墓の壁面画「ミイラとアヌビス神」には背景に亀甲文様が描かれており、この文様の古さを示している。我が国では古墳時代にはみられ、福岡県鈴ヶ山2号墳から出土した大刀の柄頭に亀甲の中に一羽のはばたく鳳凰が象嵌されている例が紹介されている。飛鳥・奈良時代には法隆寺献納宝物の蜀江錦などの染織品に、平安以降には平家納経や伝藤原行成筆の粘葉本(でっちょうぼん)和漢朗詠集の料紙にも用いられている。

 やきものでは古清水の重箱や香炉、壺、織部の皿、仁清の色絵釘隠(くぎかくし)などにまた有田や九谷の装飾文様として江戸時代の作品に広く見られる。ここに紹介する作品は白磁胎に色絵を施した角徳利。17世紀後半の有田皿山の製品である。磁土の平板を寄せ合わせて成形する。底は平たく無釉で布目の跡がみえる。胴の四面には赤の太い線と細い線で亀甲文様をあらわし、六角形の中には黒でふちどった五弁花文様を緑で彩色する。
赤と緑が補色の関係で色あざやかな印象を与える作品である。いくつもつながった六角形の亀甲文様を亀甲繋ぎと呼ぶこともある。本図のように六角の中に花文や花菱文など他の文様をまじえた例が多い。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.15号より(昭和62年発行)

■写真…色絵亀甲花詰文角瓶
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立美術博物館所蔵
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます