トップ >> やきものコラムセラミック九州 >> vol.11 氷裂文様

やきものにみる文様VOL.11 氷裂文様(ひょうれつもんよう)


 氷裂文様は氷がひびわれたように、大小不規則の三角形、四角形、五角形、ときには六角形で分割された文様である。氷裂文様はまた氷竹(ひょうちく)文様ともよばれる。中国では家具、建築などに広く応用されている。有田皿山の製品では江戸時代後半の皿によく描かれている。大皿の中央に立鶴を描き、その周囲に氷裂文様を配している作品がある。また大皿の中央に富士と松を描き、その周囲に氷裂文様を配しているものもある。ここに紹介する「染付唐人文蓋物」は長崎の亀山窯の製品である。外側の胴一面に氷裂文様を描き、その上に梅花文様を散りばめている。氷裂文様と梅花文様のとりあわせは有田樋口窯出土の陶片(18世紀〜19世紀)にもみられる。

 やきものの表面を注意深く観察すると、釉が無数にひびわれているのがみえる。このひびわれは貫入(かんにゅう)とよばれ、それは素地(胎土)と釉の収縮率の違いによっておこる。一般に釉は素地よりも収縮率が大きく、したがって釉は素地より縮みやすいため、ついには釉がさけてひびわれる。窯からとりだされたばかりの製品は冷えるにつれてぴんぴんと音を出して釉がひびわれていく。このときに、たとえば墨汁の中に製品を浸すと、そのひび(貫入)にそって墨がにじんで氷裂文様をあらわすことができる。このようなひび文様で有名な作品に中国南宋時代の郊壇官窯の青磁がある。その文様は自然が描いた見事な氷裂文様といえるだろう。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.14号より(昭和61年発行)

■写真…染付唐人文蓋物
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます