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VOL.34 ハリ支え(はりささえ) | ||
有田磁器の窯詰め技法にハリ支えがあります。ハリ支えとは、ハリと呼ばれる小さな円錐状のピンを高台内の数ヶ所において、焼きへたりにより皿などの器面の中央部が下がるのを防止する窯詰め技術です。17世紀後半頃から、皿や鉢などの窯詰めの際に、ハリ支えを行うことが普及します。高台内は施釉してあるため、焼成後にはハリが高台内に熔着していますが、熔着面がごく小さいため、容易にとることができます。この作業を「目落とし」といったりし、またこのハリ支えの跡を「目跡」と呼ぶこともあります。ハリには耐火粘土で作られたハリと、製品と同じ材料で作られた磁器製のハリとがあり、前者は草創期のみにみられます。 写真の皿は1660〜80年代の有田磁器ですが、中国・景徳鎮窯の芙蓉手皿を模したものです。わずかに簡略化されているものの文様は中国の芙蓉手に良く似ています。しかし、裏面を見ると、高台内にハリが3ヶ所残っています。先に述べたように、焼成の際に熔着したハリは、焼成後にとってしまいますが、ごく稀にこのように熔着したまま出荷されることがあります。泉山の陶石は中国・景徳鎮の磁器原料に比べて、いくぶん耐火度が低く、焼成温度が高すぎたりすると、焼きへたりが生じたりする扱いにくい原料だったようです。ですから焼きへたりを防止するため、ハリ支えが必要だったのです。中国磁器の場合、容易に焼きへたりすることが無いため、ハリ支えは無かったのです。文様が酷似していても、中国磁器と有田磁器の違いが、高台内の目跡の有無に表れているといえるでしょう。 (宇治 章)
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