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やきものの技法VOL.32 型打ち成形(かたうちせいけい)

染付山水文八角皿(柴田夫妻コレクション)
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵


 生乾きの素地を型にかぶせて変形させ、輪花皿や八角鉢など非円形の器を作る技法です。高台はロクロで削り出すため円形となります。ロクロによる成形より手間がかかりますが、複雑な形の器ができ、また成形と同時に陽刻文様を施すことができます。

 型打ちによる成形は、有田磁器においては17世紀初頭に始まります。磁器生産の草創期の窯として知られる天神森窯では、1610年代から30年代のものとみられる型打ち成形の染付皿が出土しています。磁器窯においては早い段階から型打ちが行われていますが、磁器窯に先行する陶器窯では型打ち成形のものは見出されていません。

 中国景徳鎮窯の製品には型打ち成形が早くからあり、中国の技法を模倣して肥前で行い始めたと考えられます。型打ち成形は、変形の皿や鉢、猪口などを作る技法として江戸時代に多用され、その技法は今日でも伝統的な工房で用いられています。

 製作工程は、まずロクロで皿を作り、生乾きの素地を型にかぶせます。次いで高台を叩き締め、布で覆ったあと上から手で押え軽く叩いて型に密着させます。型は土型(つちがた)といい、今日では石膏型が用いられますが、江戸時代は素焼きの土型でした。型には陰刻の文様が施されることが多く、出来上がりの製品には陽刻文が現われます。

 写真の皿は型打ち成形による八角皿ですが、縁部の4ヶ所に唐花の陽刻文様が見られます。その間の区画には陽刻がなく、染付で花文が描かれ、陽刻と染付文が交互に配されています。

 変形の皿などを作る技法には、型打ち成形の他に糸切細工成形があります。糸切細工はロクロを用いず、板状の粘土を型にかぶせて成形する方法です。高台部は貼り付けて作り、多くは外形に合わせた変形の高台です。削り出しの円形高台である型打ち成形とは、高台の形を見ることで区別されます。


(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No42号より(平成18年発行)

■写真…染付山水文八角皿(柴田夫妻コレクション)
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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