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やきものの技法VOL.27 型紙刷毛目(かたがみはけめ)


  文様を切り抜いた型紙を素地に当て、刷毛で白土を塗ることにより器面に文様を施すこと。必ずしも刷毛目が現われるわけではなく、刷毛目はむしろ型紙文の外側にみられることが多い。「摺り絵」や「型紙摺り」、「型紙絵付け」などの技法名で表してもよいが、白い化粧土が用いられていることを示す場合はこの「型紙刷毛目」と表される。

 陶磁器に型紙を用いた摺り絵は、16世紀末の唐津焼飯洞甕下窯出土の鉄絵陶片が早い例として知られる。17世紀前半には椎の峯イッチン窯(伊万里市)や川古窯ノ谷下窯(武雄市)、小峠窯(武雄市)などの陶器窯で型紙刷毛目の製品が作られている。いずれも胎土は茶褐色であり、白い化粧土によって型紙の文様が施されている。窯から共に出土する砂目積みの皿により、型紙刷毛目が遅くとも1630年代以前に行われていたことが分かる。また同時代の有田の磁器窯である天神森窯でも、白磁胎に白土の型紙摺りが見られる。表現の印象はかなり異なるが技法は同じであり、肥前の陶器と磁器の技法の共通性が注目される。

 型紙は和紙に柿渋を塗り、耐水性を有したものが用いられたと考えられる。この種の型紙は、染織の分野では早くから用いられており、陶磁の分野に応用されたと推測される。型紙の文様は切り抜きであるため、文様の単位が小さく表され、文様と文様の間にはわずかな隙間がある。器面に型紙をあて白い化粧土を刷毛で塗る。文様の単位が大きい場合は、白い面の中に刷毛の筋が見えることがある。また文字を彫りこんだ型紙で、裏返しに器面にあてたため文字が反転した作品もある。

(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No37号より(平成13年発行)

■写真…型紙刷毛目唐花唐草文大皿
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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