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やきものの技法VOL.19 掛分け (かけわけ)


 釉薬の掛け方の技法名であり、色の違う釉薬を掛け分けること。釉薬は本来素地の表面を硝子質の物質で被うことにより、やきものを丈夫にし表面に光沢と色彩を与える。この基本的な機能をさらに装飾の面で高め、釉薬の掛け方で変化をつけたり、色の違う釉薬を組み合わせたりする。通常掛分けという場合は、2種類の釉薬が用いられている。掛け方は半分ずつ掛ける場合と、どちらかの釉薬を少なく付加的に掛ける場合がある。また柄杓で文様を描くように掛ける方法もあり、緑釉と褐釉の二彩唐津の様な例がある。また三彩は掛分けの技法でありながら、掛分けと呼ばずに通常は単に三彩と呼ぶ。

 釉薬を掛け分けるとき、浸し掛けにより半々に施釉すると片身替わりになる。皿類に多く、最も掛分けという名前に相応しい。上野焼(あがのやき)の皿で褐釉と藁灰釉を掛け分けたものがある。高取焼(たかとりやき)にもこの組み合わせの作品がある。写真の沓茶碗(くつちゃわん)は17世紀前半の高取焼であり、藁灰釉の白と褐釉の対比が特徴となっている。この茶碗は2種の釉薬が左右に掛け分けられているが、上下に掛け分ける場合も多い。唐津焼でいう朝鮮唐津は、この上下掛け分けのタイプである。釉薬の組み合わせは藁灰釉と褐釉であるが、上下であるため上の釉薬が下にのぎ目状に流れ落ち、独特の装飾的効果が生まれる。

 掛分けは釉薬の色の区画で装飾するだけではなく、透明釉を用いる場合は、文様と組み合わせて効果をあげる。その好例が織部である。鉄絵の具で文様を描き、その上から透明釉を掛ける。その周辺に緑釉を掛けて彩りを添える。

(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No25号より(平成4年発行)

■写真…掛分沓茶碗
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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