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やきものの技法VOL.15 飛び鉋(とびかんな)

 生乾きの素地を破線状に削って文様を施すこと。ろくろの上に生素地をおき、回転している素地に弾力性のある鉋(かんな)や箆(へら)をあてると、飛び飛びに素地の表面が削られる。よって飛び鉋(とびかんな)、踊り箆(おどりべら)、撥ね箆(はねべら)などと呼ばれる。信楽ではトチリとも呼ばれている。

 飛び鉋は通常化粧土を施してから行われる。褐色の素地に白い化粧土を掛けると、見かけは白い焼物となる。この表面の白い化粧土の層を削り取ると、下の褐色の素地が現れ、白地に褐色の文様ができる。逆に素地の色が白く化粧土が黒い場合は、黒地に白い文様ができる。

 飛び鉋は化粧土を施さなくてもなされる。素地に破線状の凹凸がつけられ、褐色の飴釉を掛けると、釉薬の濃淡が生まれ、それが文様となって器面に変化がつけられる。しかし、飛び鉋特有の軽快さは、化粧土を施したほうがより鮮明となる。

 飛び鉋の古い例では、中国磁州窯の作品が知られている。磁州窯は化粧土の掛け方が複雑で、薄茶色の素地に白い化粧土を掛け、さらにその上から黒い化粧土を掛けている。よって飛び鉋を施すと、黒地に白い点が現れる。またこの状態の文様を飛白文という。

 日本の焼物では、小鹿田焼や小石原焼などの陶器窯でよく見られる。化粧土を施すことが多いため、飛び鉋は陶器の装飾技法である場合が多い。しかし磁器の作品にもたまにみられ、写真の瓶のように17世紀中葉には既に有田でも飛び鉋がおこなわれている。
(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No21号より(平成3年発行)

■写真…褐釉飛鉋文瓢形瓶
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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