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VOL.14 刷毛目(はけめ) | |
泥漿にした化粧土を、刷毛で素地に塗る装飾技法。化粧土を施す方法は、泥漿の中に浸す粉引(こひき)の技法と、泥漿を刷毛で塗る刷毛目がある。前者の場合は、むらのない無地ができるが、後者は刷毛塗りのむらが出やすい。このむらを意図的にしたのが、装飾技法としての刷毛目である。 褐色の素地に白い化粧土を施す技法は、李朝の粉青沙器(ふんせいさき)に多く見られる。日本では、17世紀初頭に、唐津焼において刷毛目の作品が現われる。その後化粧土の技法は、日本各地の陶器窯で普及した。粉引と刷毛目は、化粧土を用いる点では共通しているが、その装飾的な効果においては印象が大きく異なる。全体を白く化粧することこそが主である粉引に対して、刷毛目は全体に施すとはかぎらない。一部に塗ったり、化粧土で文様を描いたり、また刷毛目そのものを装飾として施す場合が多い。文様として描く場合は、手間のかかる象嵌文様の代用技法とみなされる。現川焼のように、洗練された刷毛目装飾となると、象嵌の省略化とは異なり、特有の表現が確立されている。 写真の花瓶は、白土の泥漿を刷毛で素地に打ちつけたもので、打刷毛目(うちはけめ)の名称がある。刷毛目の濃淡と繰り返しの文様には、象嵌文のような趣がある。圏線状の文様は、刷毛塗りしたあと指などで押えて、化粧土を白く残したものである。全体を白く刷毛塗りしたあと、櫛状のヘラで線彫文を入れることもある。またロクロを回転しながら、波状の刷毛目文を施す大皿は、刷毛目の作例としてよく知られている。 (鈴田由紀夫)
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