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やきものの技法VOL.11 化粧掛け(けしょうがけ)

 成形した素地の表面を別の土で美しく装うこと。ほとんどが白い土を用いるので、白化粧ともよばれる。フランス語のengober(泥漿を掛ける)により、我国で「エンゴーベ」と称されることがある。化粧掛けは、白土を水に溶かして「掛ける」のであるが、泥漿の中に「浸す」方法もある。また刷毛で白い泥漿を「塗る」方法もある。いずれの場合も白化粧がなされることに変わりはないが、「塗る」場合は刷毛目が残り、それ自体が文様として特色をもつので、「化粧掛け」とは呼ばずに「刷毛目」と読んでいる。したがって化粧掛けという技法は、泥漿を掛けるか浸すことによって素地を装うことと解せられる。

 化粧掛けは、素地が黒っぽいものや肌が美しくないものをカバーするために行われる。表面に白い土の層をつくることによって、素地は白く滑らかになり、またその上に文様を描くにしても色がきれいに見える。こうした化粧掛けの技法は古くからあり、たとえば中国においては、唐代の三彩、宋代の磁州窯の製品等によく見られる。磁州窯の場合は、化粧掛けされたものの上に文様を描くほか、文様の部分だけ表面の化粧土を掻き落とし、素地そのものの灰地を文様として表出させている。朝鮮では化粧土を用いた装飾は多く、象嵌や刷毛目とともに、化粧掛けによる「粉引き(こひきまたは粉吹き)」の茶碗が名品として残されている。粉引きの場合は、泥漿に浸す方の化粧掛けである。日本では九州各地の陶器窯でみられる他、美濃の織部や京都の乾山にもみとめられる。乾山は化粧土を絵具として用いたところに特色がある。写真の碗は白化粧掛後透明釉をかけて本焼きし、さらに上絵付けをしている。
(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No17号より(昭和63年発行)

■写真…色絵菊唐草文碗
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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