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VOL.3 印版(3)―銅版絵付け― | |
陶磁器用絵具を用いて銅版印刷し、紙に刷られた文様を器面に転写する絵付けを、銅版絵付けという。この名称から、銅版を直接あてて絵付けをすると思いがちだが、銅版によって印刷するのは紙の方で、器面へはその紙をあてて転写絵付けする。したがって銅版転写法ともよばれる。この技法は、上絵付(うわえつ)けと下絵付(したえつ)け(染付※)の両方があるが、一般には後者をさす場合が多い。 銅版絵付けは、(1)銅版彫刻(2)印刷(3)転写の段階からなる。(1)はロウで被膜した銅板に鉄筆で文様を描き酸で腐食する、いわゆるエッチングの手法による。この場合、文様の濃淡がすべて斜線で表されることに特色がある。(2)の印刷は、陶磁器用絵具に粘質の草根やグリセリンなどを混ぜて行う。(3)の転写は、「うつし絵」の要領と同じである。印刷面の文様側を素焼(すや)きした素地(きじ)にあて、紙の裏面に湿気を与えて軽くこすり、紙をはがして絵具が素地側に付着すれば絵付けが完了したことになる。 銅版転写による製品は日用雑器がほとんどで、一般家庭にその伝世品がしばしば見うけられる。写真の染付鉢は、伊万里市の旧家で使われていたものである。産地や年代など未詳だが、肥前地区で明治後期か大正時代に作られたものであろう。この鉢の文様にも、銅版の特色がいくつかみられる。たとえば手がきのダミにあたる陰影はすべて細い平行線で表わされ(説明図参照)、牡丹花の下方には転写紙の重なりを示唆する部分が見いだされる。 日本での銅版絵付けは、19世紀半ばに瀬戸・美濃地方で試みられたが、いずれも量産の特質を生かすまでに至らず、短期間で終っている。しかし明治中期に再興し、技術的にも改良されたため、型紙絵付(かたがみえつ)けにかわる量産むき技法として各地の磁器窯で流行した。 (鈴田由紀夫)
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