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Vol.40 |
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余白の美
酒井田柿右衛門
■発行所
(株)集英社
■著者
十四代酒井田柿右衛門
■定価
760円
■ジャンル
随筆 |
至高の色絵磁器、柿右衛門。
研ぎ澄まされた美の秘密を十四代当主が初めて明かす!
(カバー広告より)
「ここまで話していいの?!」と発行当初、陶磁器業界や地元有田で話題になった本。人間国宝で柿右衛門窯の当主・14代酒井田柿右衛門氏が語る、「柿右衛門」の美の世界。
「Tわたし」・「Uつくる」・「Vあじわう」の三部構成によって、「柿右衛門」の美の真髄が語られています。世界中の陶磁器に影響を与えた名門・柿右衛門の歴史と代々受け継がれてきた伝統の技とその心、またこれからの伝統工芸の行き先。柿右衛門を知るだけではなく、日本文化をこれからどう継承させていくのかといった点にも考えさせられます。
「もの作り半分、職人作り半分」というセンテンスでは、本当の意味での有田焼をつくることができる職人がほとんどいなくなったことに関して、地元有田の将来を憂う意見が述べてありますが、これは有田に限った話ではなく「便利・早く・安く・簡単に」を当たり前のように生活に求め続けてきた日本の暮らしに対する警鐘のようにも聞こえます。
職人をいかすシステムも消え、本当に職人がいなくなってしまう
これはものではなくて関係、目には見えにくい人間と人間の関係なんですから。
伝統と言ってもどこかこう人と時代、時代と時代が繋がっていないのが現状では
という言葉からは、ひとつの伝統的美意識のみを舞台とした発言ではなく、非常に現代社会によって深刻な問題となっている点をつかれている気がしてなりません。
柿右衛門の製作工程に関する内容も非常に詳細に記されており、陶磁器ファンにとっても初めて聞く話が多いのではと思います。「柿右衛門のすべて」が語られたといっても過言ではないその奥深い内容。ぜひ読書をおすすめしたい一冊です。
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