Vol.35 |
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永仁の壺
(えいにんのつぼ)
■発行所
新潮社
■著者
村松友視(むらまつともみ)
■定価
1700円
■ジャンル
小説 |
本物でなければ、贋作なのか!陶芸界を揺るがした世紀のスキャンダル。封印された事件の深奥には、「陶人」の細胞に息づく、魂の衝動が秘められていた―。(カバー広告より)
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昭和34年。重要文化財の指定を受けた永仁銘瓶子の真贋を巡って、世間の耳目を集めることになった「永仁の壷事件」。この事件は、「技術が下手でも古いものなら値打ちがある」という風潮や、「人が作ったものを人が評価するときの鑑定基準はどうあるべきか」など、芸術批評に対する多くの問題に一石を投じることになった事件です。
この小説は、「永仁の壷事件」がなぜ起きたのか、問題の核心は何だったのかという謎に迫りながら、私たちが何気なく思い描いている、本物=善、贋物=悪、という固定観念への疑問にも鋭く迫る作品です。
小説は二本の柱で構成されています。一本が「永仁の壷」にまつわる謎の解明。もう一本が、贋作家(贋小説家)の無銭宿泊にまつわる話です。後者の話では、本物の小説家である私と、贋作家との間にある隔たりについて、私と贋物の作家の間にはあきらかに区別するような隔たりがあるわけではなく、本物の作家として生活している私自信の身分については、非常にあいまいで不安定な身分であることの証明が、話が進むとともになされていきます。
「永仁の壷事件」の方に話を戻すと、事件の中心人物である文化財保護委員会の技師であった小山富士夫と陶人加藤唐九郎の二人の関係が、史実に基づいて分かりやすく説明してあり、事件のことを知らない方でも興味深く読み進めることができます。
永仁銘瓶子の贋作者として、どちらかというと悪者扱いをされてしまった加藤唐九郎については、彼の経歴や実際にあった発言を読み進みながら、彼の野性味ある魅力の一端を垣間見ることができます。
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