| Vol.32 | 
                
                
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                  雪古九谷 
                  (ゆきこくたに) 
                  ■発行所 
                  学陽書房 
                  ■著者 
                  高田 宏(たかだひろし) 
                  ■定価 
                  700円 
                  ■ジャンル 
                  歴史小説 | 
                
                
                  
                   
                  「殿様の気に入るまいが、何百年の後の人でも引き込まれる絵を残さねばならん…。」江戸所期の短期間、加賀国大聖寺藩で制作され、世界美術史上の名品を残した謎の彩色磁器「古九谷」。藩主前田利治、窯場奉行後藤才次郎、そして絵師の太吉ら九谷焼に情熱を傾けた人々の真実の姿に迫る長編小説。 
                  (カバー広告より) 
                   
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                   のちの世に「古九谷」と呼ばれるようになる江戸時代初期の彩色磁器。その歴史的出現の過程に秘められたドラマを、ひとつの物語として結実させた作品です。 
                   
                   加賀国大聖寺藩、二代目藩主前田利明。彼は、九谷焼繁栄のためには肥前有田に勝る磁器を生産する必要があると説き、窯場奉行である後藤才次郎の代わりに肥前有田から技術を学んできた忠清に、その跡目を任せようとします。 
                   
                   忠清に九谷を任せるということは、肥前有田の真似事をするというだけにすぎず、それはまさしく九谷焼の終焉を意味するものでした。 
                   才次郎の元、絵師として比類なき才能を開花させた太吉は、伴侶であるおりんとともに、終焉に向かう九谷焼の絵師として、最後の作品作りに取り組みます。 
                  この物語は、文庫版の解説にもあるように、闇に葬られた古九谷の歴史を蘇らせる時代小説であると同時に、すぐれた芸術小説でもあるといえます。 
                   
                   小説の中で語られる次のような九谷焼への言葉に、作者の考える芸術とはなにかという根源的な問いかけが垣間見えるような気がします。 
                  「殿様が気に入ろうが気に入るまいが、何百年の後の人でも、一度見たら引き込まれる絵を残さねばならん。一度見たらめのうらに焼きついて忘れられんほどの絵でなくてはならん。そういう絵は、銭の世から離れて、心で描かねば生れないのだ」 
                   
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