Vol.25 |
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焔
(ほむら)
■発行所
文芸社
■著者
森本ふじお
■定価
1100円
■ジャンル
現代小説 |
陶芸を通じて燃え上がる人間の感情をみごとに描き出した情熱のドラマ。飛騨の古川を舞台に志野焼に自らの命までをも捧げた、主人公圭介の残した名品「鬼志野茶碗」。永遠なるものをめざし、ついにその魂は炎の中へ還っていく。(カバー広告より)
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飛騨地方。ある茶の宗匠により「焔(ほむら)」と銘が打たれた鬼志野茶碗。志野焼陶工荒木圭介の最期の作品です。
この小説は、その銘が象徴するように、執念にも似た情熱とエネルギーをもって志野焼に全身全霊を賭けた彼の生涯を描きます。
友子との新婚旅行の最中、米原のホテルで出会った一人の老人。その老人は自らが手がけた志野の茶碗を彼に見せ、「あなたの作品の究極的完成が私の執着点でもある」と訴え、会得したすべての技術を伝授したいと言います。
友子を一人にしてまでも老人が待つ多治見へ旅立つことを選んだ彼の胸中には、志野焼に賭ける人並みならぬ決意があります。しかし、そのことが、彼と友子を結果的に不幸にさせることなど、知る由もありません。彼が多治見から十ヶ月ぶりに友子のもとに帰ってきたときに目にしたもの、それは、彼女と行きずりの男との間に生まれた一人の赤子でした。
結局、友子は心痛の日々を送り、突然白血病で亡くなります。
友子が亡くなってから十八年。物語は、彼と二人の女性との関係を描きながらクライマックスへと展開していきます。女性の一人は冬子。友子に似たその容姿に思わず「友子!」と声を掛けたのが運命的な出会いのきっかけ。そして、高校を卒業して高山の観光ツーリストに働く圭介の一人娘、奈々がもう一人の女性です。
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