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「今から約400年前、武雄の各地でも陶器を生産していたんですよ」と武雄の焼き物ルーツを語りながら、「武雄に窯を構える者として、古唐津の武雄焼ではなく新しい武雄焼というものを打ち出したい」と力を込める松尾重利さん。武雄市若木町の凌山(りょうざん)窯で青白磁の美を追い求める。 日用食器から大作に至る松尾さんの作品を見ていると、どれも柔和で、ぬくもりにあふれた表情が印象的だ。 幼いころから、絵をかくのが好きだったという。中学卒業時には父の勧めもあり、有田の県立陶芸所に通った。 その後、有田の磁器メーカーに勤務。絵付けを専門に行っていたが、次第にすべて自分の手で作品を作りたいという思いに駆られ、嬉野で琥山窯を構える故小野琥山氏のもとでろくろを学んだ。 「昼休みなどスケッチに行ったとき、時を忘れるほど熱中したこともあったが、琥山師は『君のためでもあり、窯のためでもある』と激励してくださるほど寛大でした。いろいろ勉強させてもらい、本当に感謝しています」と当時を振り返る。 37歳のとき、一念発起して独立。武雄市東川登に窯を築いた。一時期、有田の陶芸村に移り、平成3年、現在の場所に窯を構えた。 周囲は、山や池に囲まれ、豊かな自然に満ちている。「陶工として一番落ち着く場所。400年前の先人たちが窯を構えた地でもある」と言い、最近は二人の孫たちと周囲の山に分け入って行くのが楽しみだという。 大英博物館展に出品するのは直線と曲線の構成を意識した作品「拡張文器」。丸く成形した器を左右から押さえ、だ円形のフォルムを作り上げた。表面には釉薬(ゆうやく)を厚くかけ、切れ目のデザインがアクセントを付ける。 磁器は一般に冷たい、固いというイメージがある。「絵の具と釉薬が私の看板」という松尾さんは、釉薬を厚くすることによって、逆に温かみを持たせている。 また、皿などに絵付けされた山野草は「自然が素材でもあり、先生でもある」という松尾さんの言葉を代弁するようにほのかな色彩を放ち、あくまで自然の美を追求しているかのようだ。 同じ凌山窯では、息子潤さんが陶作に励んでいる。潤さんも昨年、県陶芸協会員になった。「一人の作陶家として、息子の存在は刺激にもなります」と話す。展示場では父の磁器、息子の陶器が並ぶ。互いの個性を尊重し合いながら、調和した空間が見る者を飽きさせない。 「惰性に流されず、常にプラスアルファを追い求めたい」と胸の内を語る。出展する「拡張文様」についても、「発送の九月までしばらく時間があるので、もう一度、挑戦したい」。柔和な表情の語り口から、想像もできない創作への飽くなき姿勢を垣間見た。 |
■凌山(りょうざん)窯 武雄市若木町川古 JR武雄温泉駅から車で15分。若木農協前バス停から徒歩10分。 駐車場12台。 電話0954(26)2422 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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