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「焼き物の里といわれる佐賀には数え切れないほどたくさんの陶芸家がいるけど、自分みたいな経歴を持つ作家はいないんじゃないの」と快活に笑う小野さん。 確かに陶芸家としては異色の経歴の持ち主だ。 琥山窯を創立した小野琥山が祖父。釉裏金彩(ゆうりきんさい)で知られる珀子をおばに、釉裏紅(ゆうりこう)、染付など芸術性の高い精緻(せいち)な美を追求する祥瓷をおじに持つ。まさに『陶芸一家』に生まれながら、高校卒業後は全く畑違いの衣料品販売会社に就職。本格的に陶芸の道に進んだのは結婚を機に帰郷し、琥山窯に入社した25歳の時から。 それまでは陶芸どころか、絵画や音楽にも関心はなかったという。「自分にはセンスがないと感じていたから陶芸の道に進むとは夢にも思わなかった。それでもこうなったのは、やっぱり血筋なんですかね」 琥山窯に入ったものの、陶芸に関する経験や知識はゼロで、一からのスタート。最初に手掛けたのは花瓶などの鋳込みといった単純作業ばかりだった、と振り返る。 徐々に彫りや絵付けなどを任されるようになったが、「よくしかられました。特に祥瓷先生は厳しかった。頭ごなしではないが、心にズシリと響くような指導だった。でもそのおかげで、どんなときでも土と真剣に向き合い、土の声を聞きながら作陶できる気構えができました」染付、呉須、吹き付け、南蛮など多彩な表現方法を用いる小野さんだが、ここ4、5年は主に釉象嵌(ゆうぞうがん)に取り組んでいる。 つや消しの釉薬を施した器の表面を彫り、その中に青磁用の釉薬を埋め込む手法。白を基調にしているため、通常の象嵌よりも表情が柔かで、清潔感すら漂う。埋め込む釉薬も失敗を重ねながら独自に作り上げた。「基本的な釉薬とはかなりかけ離れた代物」とは当人の弁だ。 自宅で使用する器はすべて自作するという小野さんの趣味は料理。家族を相手に自慢の腕を振るうことも多く、自分が食べたい料理を盛り付けるにはどんな器が合うか、考えているときがいい気分転換という。 「焼成段階で完成させるか、料理を盛った状態で完成とするか、と問われれば後者」と言い切る小野さんは、料理を主役に据え、器自体はわき役に徹するべきと考える。「焼き物の使い方は個々の自由。でも、作る側としてはどこかに実用性を加味しないと」 県陶芸協会会員として初めての作品展が大英博物館展。もちろん、海外の展覧会に出展するのは初めて。会員の末席を温めるだけの自分が本当に出展していいのかという戸惑いと不安もかなりあった、と吐露する。 しかし「多くの人に日本の焼き物の魅力を知ってもらう絶好の機会。見に来る世界中の人たちの期待を裏切らない作品を出したい」と腹を決めた今では、展覧会開催を楽しみに待っている。 |
■琥山窯(こざんがま) 嬉野町下宿乙223 JR武雄温泉駅から車で20分。 嬉野公会堂前バス停から徒歩4分。長崎自動車道嬉野インターから車で5分。 展示場あり。駐車場10分。 電話0954(42)0118 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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