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そうた窯
そうたがま


 有田町のすぐお隣り山内町に、まだ新しい窯をかまえるそうた窯。ここ最近、「古典的な有田焼の柄なんだけど、今っぽくってすてき!」と人気を集め、ちょっとしたブームになっています。とくに染付の器は人気が高く、有田町内のやきものショップでよく見かけるのはもちろん、デパートでも専用コーナーができるほどです。その人気の秘密は何か?一体どんな方がつくっていらっしゃるのか、ちょっと探りにでかけてきました!お話は窯主である諸隈直哉さんにお伺いしました。

―はじめまして。そうた窯さんは、まだ新しい窯元さんなんですよね。

 ええ、もともと僕は実家が有田焼窯元だったのですが、そうた窯をかまえて独立したのは6年前なんですよ。24歳までサラリーマンをして、そして28歳までアメリカにいたのですが、その後、波佐見の伝統工芸士さんのもとで修行をし、家業を手伝っていました。有田焼は割烹食器、いわゆる料亭や旅館向けのプロ用食器を中心につくっていたのですが、僕自身は一般食器を中心につくりたいなと思い、毎日を楽しくするような食器づくりをめざしてつくっています。


―そうた窯さんというと染付の古典的な文様の器に人気があるのですが、少し染付の藍色が親しみ易い明るさの色ですよね。


 染付は飽きがこないし、自分でも使いやすいなと思うので、一般食器としては魅力的と思うんですね。うちでは染付に使う色の原料「呉須(ごす)」は、オリジナルブレンドで、色味をつくっています。「古典的な柄だけど今風」とよく言われますが、おもに九州陶磁文化館に所蔵されている、古伊万里の柴田夫妻コレクションを自分の教科書としています。昔の職人による精緻な仕事や、意匠力にはほんとにおどろかされます。コレクションの中から気にいった文様があれば、今風にアレンジしながら商品開発を行っているんですよ。たとえば、雲文様だけにしてもひとつのパターンから数種類のバリエーションを考えます。窯には11人の男女スタッフがいますが、みんなでああでもない、こうでもないと知恵を出し合いながら、作り出していきます。この龍の文様シリーズも、人気があるのですが、龍をそのまま昔の図柄を写して描いたら、目が鋭く鱗などもあって怖いイメージなのですが、女性受けするよう、優しい顔、鱗はふわふわした毛のようにアレンジしています。何かに似ていると思いません?僕の中ではファルコン(映画ネバーエンディングストーリーに登場)をイメージしてるんだよ。(笑)

―わ、ほんとだ!絵付け文様もさることながら、ありそうでなさそうな、ちょっとゆがんだ形や、ろくろ目のある器も特徴的ですよね。お料理好きの人には盛り付け甲斐がありそうだし、そうでない人もそれなりにおいしく盛り付けられそうです。(笑)

 そうですね。自分も食べることが大好きだし、若い頃アメリカに住んでいた時に、日本料理レストランでアルバイトしていた経験もあるんですよ。
やっぱりせっかく器をつくるからには、長く愛されるような器をつくりたいですね。どんどん新商品が出るのも魅力的ではありますが、商品=器の寿命が短いということは、お客さんに人気がない、つまり満足いただけていないという側面もあるのではと思います。文様に関してもそうなのですが、形を決める際にも、何度も試作し、3ヶ月から半年くらいをかけて手直ししながら、商品を開発しています。スピードに乗り遅れるようですが、時間がかかってもいい物をつくっていきたいし、手描きや手づくりの魅力を、たくさんの人に知っていただきたいですね。幸い「次に焼きあがるまで待っている」と言ってくださるお客さんもたくさんいらっしゃるので、そういった方を大事にしながら仕事を続けられたらと思います。
 それと同時に、これまでの歴史で培われてきた「有田焼」の伝統技術をどう後世に残していくかということも、私たちの使命なんじゃないかと思いますね。これだけのスピード・オート化した時代で、ましてや不況ともなると、こつこつ時間をかける仕事には厳しい時代です。将来「有田焼」という名前だけが残るのでは悲しい!そのためには、官民が協力して後継者を指導育成していく場を設けていかなくてはと思うのですが。

―なるほど、ほんとにこのロクロ目のある器は、もちやすいです。(出されたお茶を飲みながら)

 ロクロ目をあえて残すことで、手の動きが器に残っているから、持った手にもしっくり馴染んでくれるんじゃないかな。その器の口と底を指でつまんで触ってみてください。底にいくほど、厚みがでてくるので、安定感も増すんです。そして口あたりもいい。成形時に型を使ったり、ある程度機械化してつくられたものは、厚みが一定なのでこうはいきません。とはいえ、そういった物は安価にお客さんが楽しめるし、一概に「つくらない」訳じゃありません。毎日の食卓で、気軽にがんがん使って欲しいしね!割れちゃったら、また買ってもらえればいいわけだし。(笑)

―そりゃそうですね!ところで、やきもの以外で何かご趣味はおありですか?

 乗り物が好きでね、バイクも大好き。アメリカにいた頃にね、セスナ飛行機の免許もとったんですよ。こちらに帰ってきてからも、クラブに入って飛んでいたけど、最近は忙しくて乗っていないなあ。今日あたりは、いい天気だから飛びたいよね。ああ、飛びたいなあ。(笑)
もちろん、おもしろくて難しいけれど、何も考えずにひたすらロクロを回すのも好きですよ!


 はじめてお会いしたにもかかわらず、ざっくばらんに楽しくお話させていただきました。老舗の多い有田焼業界の中で、きらりとあらわれたそうた窯の器は、諸隈さんの物作りへのこだわりと生活を楽しみたいという気持ちが、今の消費者である私たちの気分にぴったりあっているのではないでしょうか。
「高級」という印象の強い有田焼ですが、ちょっと生活を潤してくれるような器を発見することができました。諸隈さんからは、作り手の立場からお話を伺いましたが、使う方としてもどうやっていい物を見つけるのかということを教えていただいたような気がしました。

そうた窯の器は、有田町内では「まるぶん」・「青雅堂」・「藍土」・「マルシゲ陶器」・「金照堂」といったやきものショップで取り扱われています。また東京のデパート・伊勢丹新宿店の食器売り場にはそうた窯コーナーがあり、伊勢丹オリジナルのそうた窯の器が販売されています。

DATA
そうた窯(惣太窯と表記されることもあります)
http://www.arita.or.jp/souta/
所在地 〒849-2300 佐賀県杵島郡山内町立野川内狩立
電 話 0954-45-6185
展示場
交 通 JR上有田駅から車で8分
駐車場
店休日 カレンダー通り(不定期で休む場合もあります。)
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