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デザイン力向上教育訓練事業
 デザイン向上教育事業の研修会第2弾が3月3〜4日の両日、大有田焼会館で開催されました。第1回目の研修は3日14時から「サステナブル(継続することが出来る)デザイン」というテーマで、株式会社オープンハウス代表取締役社長・エコデザイン研究所代表・東京造形大学デザイン学科教授などを歴任される益田文和氏が講演されました。
 益田氏は、市場経済においてはニーズに合わせて商品が開発されてきたが、その結果、資源の枯渇や地球環境に与える深刻な影響をもたらしてきた現実を踏まえて、今後は将来のあるべき姿・サステナブルな循環型社会を見据えて、今必要なデザインを考えていかなければならないとするバックキャスティング法を紹介されました。氏は様々な分野でエコ商品やエネルギーの消費を抑える努力がなされているが、実際にはエネルギーの消費が増えてしまっている実情を解決する方法として所有する価値観からの脱却、循環型の新ビジネスモデルを提唱。インダストリアルデザインの世界では、将来の循環型社会を見据えて竹でつくられた椅子やオーディオ、植物から精製されたプラスチックの商品、ガラス瓶のリサイクル商品、リユースするサービスなど様々な循環型デザイン開発に取り組まれている事例が紹介されました。
 講演の最後に氏から伊万里・有田焼産地へのサステナブルデザインの観点から次の3点を提言として挙げられました。
1、 売れるデザインの他に、「何がこれからの社会作りに必要なデザインか?」を考える
2、 これからの日本の食について考える。半分に満たない食糧自給率、農業の行く末、地のものどうやって食べていくのか、真の日本食について…
3、 食器以外に陶磁器が役立つ分野について真剣に考える

そのヒントとしては、食器の個人向けレンタル、食にまつわる陶磁器以外の新たな事業ドメイン、道具・素材としてのイノベーション、絵付けがもたらす価値の可能性などを示唆されました。

 第2回目の研修は4日13時30分より「これからの地場産業のデザインについて考える」をテーマに、株式会社東京デザインセンター代表取締役社長・日本デザインコンサルタント協会代表幹事などを歴任される船曳鴻紅氏が講演されました。
 船曳氏は日本の地場産業の型として、北米輸出先行の量産型、国内消費者向けの量産型、国内消費向け高付加価値型、海外向け高付加価値型の4種類があるが、伊万里・有田焼の今後の方向性としては4番目の海外向け高付加価値型の地場産業として活路を見出すべきではないかとし、そのためにはヨーロッパでの見本市の動向を見据えて今後の商品開発・販路を求めていかなければならないと力説。リヨン国際レストラン・ホテル見本市の模様やミシュラン・ガイドブックに掲載されているレストランや最近人気が出てきたレストランなどの動向を知る映像をもとにトレンドを紹介。このところ白・無地の器が主流となり、そのためフォルムが強調された器がトレンドとなり、世界のいたるところに浸透している。フランスのシェフに聞くと「そろそろ変えたい!」という答えが返ってきたことを話され、次の新しい傾向として出てきているのがインテリアを中心としてフェミニンな絵柄であるとその模様を紹介されました。
今後産地が活路をヨーロッパに見出すのであれば、業務用食器であれば輸出が可能であり、そのためには三ツ星レストランやヨーロッパで活躍するインテリア・コーディネーターへのアプローチ、雑誌社への広報をしていかなければならないと指導されました。

 第3回目は引き続き同日16時から、株式会社ティーポット代表取締役社長、日本デザインコンサルタント協会幹事の御手洗照子氏が講演。商品開発の要点として、これからは作者の想いが伝わる器、使う人がその想いを感じて気に入れば作者とつながっていく、そのような人と人とをつなぐ器が求められている。そのためには「虫の目、鳥の目」が大事であり、生活者の立場に立ち、日常生活に密着した視点「虫の目」と空間と時間軸の中で今の自分が置かれた位置を見る「鳥の目」の必要性を説かれました。また、ヨーロッパでの展示会の変化の様子、古い倉庫群を利用した街の活性化に成功した事例などを紹介され、今後の産地として生き残っていくには、自分たちが持っているもので、それがどこにもなく、どこにも行かないものが大切であると指導されました。

お申し込み・お問合せ
伊万里・有田焼産地再生プロジェクト推進協議会
佐賀県西松浦郡有田町中部丙954番地9 大有田焼振興協同組合内
担当 鐘ヶ江・渕野
電話0955−43−2121 FAX0955−43−2100

取材協力:大有田焼振興協同組合


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