トップ >> うまか陶ジャーナル >> 消費地コアリーダーの産地ツアー 第2弾

消費地コアリーダーの産地ツアー

1月23日 佐賀県立九州陶磁文化館
 午前9時、コアリーダーの皆さんは前夜宿泊された旅館から、バスで
九州陶磁文化館に到着されました。館では学芸員の森田さんから、先ずからくり時計の実演を見せていただき、その後、第4展示室でやきものの種類、歴史、様式、技法などの紹介してもらいました。同展示室にある蒲原コレクション(ヨーロッパに渡った豪華絢爛たる金襴手の古伊万里を蒐集)では様々な使い方の紹介に皆さん感心やら驚きを感じられたようでした。中でも、「下に○番の作品は便器でした」と説明があると、誰もが眠い眼がパッと開いたようでした。
次に、第3展示室へ移動し、九州の古陶磁を見学。ここには古唐津、古伊万里、柿右衛門、鍋島をはじめ、九州各県の古陶磁が一堂に展示されています。このあたりから、参加されたコアリーダーの方々は各自の興味のあるそれぞれの作品の前に立ち止まられたり、見入っていらっしゃいました。
 そして、時間も押してきたので、第5展示室へ。ここには有名な
柴田夫妻コレクションが展示されています。柴田夫妻は江戸期の古伊万里を体系的に蒐集され、1万点以上の蒐集品を全て九州陶磁文化館に寄贈されています。第5展示室には1万点の中から時代ごとに約1,000点が展示されていました。コアリーダーの方々は学芸員の森田さんの話を聞きながらも、やはり気になる作品をあちこちに発見し、「キレイね!」「オシャレ!」と古伊万里の技術の高さに驚かれた様子でした。その中でも変形皿や小皿に、より興味をもたれ、「レプリカはないの?」という質問が飛び出していたようです。そしてロビーに展示されているレプリカの前にさっと集まられ、そろそろお買い物モードにスイッチが切り替わった様子でした。

1月23日 しん窯
 次は九州陶磁文化館からバスで
しん窯へ移動して、絵付け体験工房へ。社長の梶原さんよりあいさつがあった後、伝統工芸士の橋口さんより、絵付けの指導。「線描きで描いてください」という指示に、「えっ、塗れないの?」と少々不満の声があちこちから。橋口さんは急遽、濃み筆で塗りの実演をされ、これを見て皆さんは「これは、ムリ」と。そして線描き中心の絵付けを始められました。先ず、エンピツで薄く下絵を書き、その上から筆に染付の絵具を含ませて、下絵の上に筆を…。「筆は同じスピードで、大胆にかいてください」というアドバイス通りに、意外と皆さんは大胆に、そして繊細に、あるいはかわいい絵を描かれていました。絵付け体験が済むと、梶原社長の案内で工場の見学へ。工場では休日にも関わらず、ロクロと下絵付けの実演を見学でき、更に具体的な質問が矢継ぎ早に出されていました。
 工場の見学に後ろ髪を引かれるように、裏山にある江戸期の登り窯跡の横を登り、昨晩焼成が終わったばかりという
登り窯を見学。コアリーダーの方々は窯焚きの雰囲気を少しでも感じようと、窯にさわったり、その暖かさを味わっておられました。そして最後にしん窯のショップへ。入るや否や、皆さんは買い物モード。「お買い物は次の卸団地で」という声に、「えっ?!」。何をか言わん、気持ちは判ります。

1月24日 卸団地
 卸団地にある「とき里」で昼食をいただき、さあっ、いざお買い物!!
うまか陶としては是非とも、
どういう買い物をされるか取材せねばと、意気込んで皆さんの後を追ったのですが、皆さんの後姿にはオーラが! それも戦闘モード、「近づいたら斬るわよ!」と無言の気迫を感じ、やむなく取材を断念。仕方なく、こちらはこちらでお店に入り品定め。「えっ、これは安い」「何で、この値段」とついついこちらも買い物モードになるのを抑えながら、時折遠くでコアリーダーの方々の姿を見ながら時間つぶし、となってしまいました。約2時間のショッピングタイムが終了し、卸団地の中にある組合会館に集合。ここでは2日間にわたったツアーの意見交換会が行われました。その模様を簡単にご紹介します。

●コアリーダーの意見
A、空港からのアプローチがつまらない。有田の町は土日なのに人が少ないので、もっと
ダイナミックなアプローチをすべき。有田は歴史を大事に受け継ぎ、層の厚さを感じ、楽しい思い出になった。他産地のものも有田焼で販売されているので、東京で受けるイメージとは違っていた。有田焼と明示すべき。

B、有田の本通りには伝統品と普通の器が並び、ギャップがあり過ぎる。もっと見慣れたものを展示すべき。また
お店に入りにくい。卸団地にある商品は家庭料理で使うには重たいものが多い。料理に負けない無地のものをよく使うので、白磁などがもっとあったほうがいい。またスタッキングと収納性がある商品もほしい。絵柄は違っても同じテイストで揃えられるものがあればいい。

C、町の印象は他の人と同じ。有田の商品は料理に+αをもたらしてくれる。しかし、有田の商品は高い。毎日使うものだから
安くなるようにしてもらいたい。レンジで使えるものや盛り皿を使うケースが多いので、それらを増やしてほしい。

D、TV番組を企画するという視点で見ると、温泉+食べ物+産物がネタとなるケースが多いが、有田を見ると分りにくく、
ストーリーが作りにくい。陶芸作家だと作れるかもしれないが、それでも弱いし、更に産業もわかりにくい。ポイントがないようだ。東京の人には顔が見えないのでは。30〜40代前半を取り込むには、まずTVだが…。

E、卸団地のお店は
同じように見える。展示の仕方も料理の写真をパネルにして置くとか、蝋細工でもいいからイメージしやすいように。家庭で出されように組み合わせて展示してほしい。

F、卸団地にはモノがありすぎて、グッグッとくるものがなかった。有田の伝統や名前は知っているが、人の顔が見えてこない。人の顔が見えてくると、この人を応援したいという気持ちがでてくる。また、自分で育てあげたいというチャンスを待っている。有田の町並みはきれいなのに淋しいし、生活観がないのでイメージが掴みにくい。
店に元気がないので、町全体でディスプレーしないとけない。また電気がついていない店は入るきっかけを無くしてしまう。生活の中で有田焼を提案できるようになってほしい。

G、空港はさみしいし、途中も何もない。これではモチベーションが下がるので、途中でモチベーションを上げる工夫がいる。特に女性は買い物に来ているので、
買う仕掛けをしておかなければいけない。人を呼ぼうとしているのに有田にホテルがないのは致命的。ターゲットとしている世代と同年代の人を使ってPRするとか、消費者に合わせたPRをしなければいけない。今日は10万もってきて、大きな皿を何種類も買う予定にしていたが、カーブしているものが多かったり、高かったりで7万しか使わなかった。


 以上のような意見が出されました。また双方から幾つかの質問も出されたなかで、「10年間で売上が1/3になったといわれるが、それまで何も手は打たれなかったのですか?」という厳しい質問がコアリーダーから出されました。これには産地側からこれまで打ってきた対策の回答がなされ、結果からすると手を打たなかったと言わざるを得ないと反省の弁もでてきました。
 産地側かの質問では、「有田焼のブランド力は? 今後有田焼で売り出せるのか?」といった質問も出てきて、これには即座に「有田焼のブランドを多いに利用すべき。使った人はやっぱり有田焼ねと言うように、差別化がされている」という答えが返ってきました。また、子供用食器について要望が出され、アニメなどの食器ではなく、有田焼のミニチュア版として子供用食器を作ってほしい。それは、食育という観点から、子供にはちゃんとした食器で食事をさせることが必要という意見もでてきました。また、
市場が細分化されているのでターゲットを絞って、誰を狙うかを明確にしなければいけないという指摘もされました。

 意見交換が一通り終わったところで、
コアリーダーの方々が購入された商品を見せていただき、何故その商品を買ったのか、気に入った理由を発表していただきました。一人ひとりが購入された商品をここで紹介するのは控えますが、購入されたものは予めこれを買うと決めていらっしゃったようです。そして、選ばれた理由としては、使いやすい、料理を盛りやすいもの、そしてオシャレというのが共通した基準のようでした。また、用途として大皿に料理を盛って取り分けるか、ワンディッシュ・ワンプレートで出されるか、色々な料理に使うといった多用途を前提に選ばれている方も多かったようです。あるいは割ってしまったから、これがなかったからといった理由で購入された商品もありました。しかし、皆さんがお買いになった商品は、やはりそれぞれデザインや絵付けのテイストが違うものでしたし、それぞれの好みや嗜好性の違いがはっきりと出ていたのではないでしょうか。まさに、市場が細分化された縮図をここで見せていただいたといった印象を受けました。

 ところで、意見交換会が終わり時計を見ると、コアリーダーの方々が出発するまでに30分位の時間の余裕がありました。すると何人かの方は「気になる商品があるから、もう一度卸団地に行っていい?」と言って、足早に出かけて行かれました。さすが! お買い物のプロはスゴイ!



取材協力:大有田焼振興協同組合


Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます