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岩永範彦遺作展
<会期:平成15年9月2日〜平成15年9月7日>
平成15年9月2日

 9月に入って、やっと真夏らしいお天気が続く毎日です。そんな太陽のまぶしさを感じる中、九州陶磁文化館で開幕した「岩永範彦遺作展」へでかけてきました。岩永範彦さんは、西有田町の白磁陶芸作家で、その卓越したろくろ技術で将来を嘱望されていた若手陶芸作家の一人でした。残念ながら昨年の9月に43歳の若さでお亡くなりになり、岩永さんの死を惜しむ有志の方々によって、今回遺作展が開催されることになったのです。会場には朝早くから、多くのファンが詰め掛け、じっくりと鑑賞されていました。会場となった九州陶磁文化館の展示室には1979年から亡くなられる直前までの作品約50点が展示されています。

 岩永さんは23歳の若さで、日展に初入選。しかしそれに至るまでも、たいへんなろくろ技術の修行があったと聞きます。この初入選作品「樹想(1983)」は、作品全体に淡い青白磁の釉薬が施されています。磁器の硬質的ななかにも不思議な流動感が感じられる作品です。作品の底にすすむにつれ、ちょうど木の根っこのように広がるフリル状の膨らみ。この膨らみは7つあり、それぞれ大きさが違うことから、リズムが生まれています。角度を変えて見ると、この膨らみがまるで呼吸しているような錯覚さえ感じます。

 1990年代になると、岩永さん独特のゆったりとした器形の作品が多くなってきます。作品のネーミングにも「豊」・「洋」といった言葉が多く登場するようになり、岩永さんが追求されたものを想像することができます。ファンのお一人の方は「こういったネーミングに注目して見ていくのも、作家の心を垣間見れるような気がしますね」と静かに語られていました。作品「豊洋(1991)」は、真正面から見ると口縁がちょうど翼のように角度と広がりがあり、大きさを感じる作品です。非常にシンプルではありますが、存在感のある作品です。

 さらに時がすすむと、シンプルな形状の中に、流動線が入ってきます。その代表ともいえる作品が、大英博物館展に出展された「悠(2000)」。器形のボリュームをさらに引き立たせるようにはいった流動線は、シンプルな青白磁の作品に光と影をも生み出します。線による段差が影を生み出し、独特のフォルムがさらに印象深く目に焼きつくのです。
また線彫りを施した作品もあり、これも白磁に光と影を生みだすことで、一層白磁の白さがひきたち、形もよりくっきりとうかびあがってくる作品となっています。こういった技法のほとんどは、ろくろの成形後に、装飾として施すのだそうです。

 会場には、展覧会出品の大型作品だけでなく、香炉や花入れなど茶道具も展示。展示室に併設されている茶室に設置され、その雰囲気を楽しめました。
将来は地区を代表する作家になるであろうと期待されていた岩永さん。今回の遺作展によって、たくさんのファンの心に残ることと想います。



●佐賀県立九州陶磁文化館

【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】有
【休館日】月曜日・12月28日〜1月1日