第21回新工芸西九州工芸展
<会期:平成15年5月21日〜平成15年6月1日> |
平成15年5月20日 |
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先日沖縄では早くも梅雨入り宣言。こちら佐賀でも緑がまぶしく、そろそろ湿度も上がってきたかなという気候。山手の早いところでは田んぼに水が入り、田植えが行われています。今回は佐賀県立九州陶磁文化館で開催の「第21回新工芸西九州工芸展」におじゃましました。新工芸西九州工芸展は「美と生活を求めて」をテーマに毎年開催されている公募展です。会場には、会員や公募の中から受賞された作品、審査員の賛助作品など50点ほどの作品が並んでいました。工芸展ということで陶器・時期・染織・木竹・七宝・漆・人形等の幅広いジャンルの作品を見ることができますが、土地柄か半数以上の作品は陶器や磁器です。
審査委員長の有山長佑氏から発表された作品講評には「出品作のレベルが向上し、新しい美の創造を見る人に訴えている秀作に喜びがあった。」とありました。
多彩なジャンルの作品が受賞していましたが、ここでは陶器や磁器の作品をご紹介いたします。大賞である「九州新工芸会長賞」を受賞したのは「膨む(磁器)」(武雄市:石橋國男さん)です。ゆったりとした大きな器形の壺に幾何学的な彫り文様が施され、淡い青磁が光の加減によってうつりかわる様が涼やかさを感じさせます。石橋さんは20年近くも青磁一筋に作陶されてきたとのこと。作品全体からは涼やかさとともに、落ちついた安定感のある存在を感じます。
佐賀県立九州陶磁文化館長賞には三人の方が選ばれています。その中のひとつ「染付『初夏』(磁器)」(武雄市:浦郷好文さん)の作品も爽やかで涼しげな印象を受けた作品。白磁に青磁を掛け分け、染付であじさいを描いています。白磁に描かれたあじさいは、雨上がりの太陽の光を浴びたような爽やかさ。また青磁部分に描かれたあじさいは、しっとりとした雨の中にぼんやりと浮かび上がっているような印象を受けます。あじさいをモチーフにすることで、梅雨から真夏に変化するまでの自然のうつろいを白磁と青磁の掛け分けで表現されていたのかもしれません。
同じく「初夏」をテーマにした作品「初夏の風(陶器)」(福岡市:猪立山正史さん)も、佐賀県立九州陶磁文化館長賞受賞作です。こちらは前出の作品とは違い、陶器によって「初夏」を表現されています。この作品は素地に白い土をかけ、一部を削り取り文様を描く「掻き落とし(かきおとし)」という技法を用いています。この作品でいうと茶色の土の色が見えているところ(写真参照)が削り取られたところです。作品の上下の白い化粧土は風の流れのような曲線で残され、その間に夏草が化粧土と緑釉にて表現されています。素地の茶色が見える部分はからりと乾いた暑い夏の地面を思わせます。そんな中でも力強く上に伸びていく夏草。
磁器の透明感や硬質感を生かした「初夏」の表現と、陶器の土味をいかした「初夏」の表現の違いを見るのも楽しいものです。
会場には受賞・入賞作品のほかに昨年9月に急逝された岩永範彦さんの遺作も展示されています。岩永さんは新工芸西九州工芸部事務局長もつとめられており、高いろくろ技術によるシンプルな白磁や青白磁の作品で将来を期待されていた若手陶芸家でした。今回展示されていたのは「宙」という広がりがどこまでも続くような大きな鉢。胴のゆったり感ときりりとひきしめられた硬質な口部の対比のバランスが魅力的な作品です。
この他にも鮮やかな色彩の染織や、深い艶と色合いの漆作品なども並んでおり、個性的な作品を見ることができます。ジャンルは違っても身近な「美」や「感動」を表現する、それぞれの作家さんの視点を考えながら見るのも楽しいものです。年々、新しい作風を開拓したり、新人作家のチャレンジが増えてきたとの。来年の展覧会でも新鮮な作品と出会いたいですね。
■取材雑記
展示の中に大きな赤い色の鉢状の作品がありました。遠目でみて、てっきり磁器の「辰砂」を用いた作品と思いきや、実は漆の作品でした。鋳金でできたランプシェードだと思って近づくと、実は陶器の焼き締めだったり。自分の思い込みもあるけれど、素材のもつ多様な「顔」でもあります。
●佐賀県立九州陶磁文化館
【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】有
【休館日】月曜日・12月28日〜1月1日 |
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