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■寄贈記念柴田コレクション展パートVII
<会期:平成13年10月19日〜12月16日>
平成13年10月19日

柴田ご夫妻による挨拶 朝夕は随分肌寒くなってきました。庭先などの柿もほどよく色づき、佐賀平野もすっかり秋景色です。この日は佐賀県立九州陶磁文化館にて「寄贈記念柴田コレクション展パートVII」が開会されるとあり、朝一番から訪問しました。毎回多くのファンで賑わうこの展覧会も三年ぶり、7回目の開催です。今回はこの展覧会を2回に分けてご紹介いたします。
 「柴田コレクション」とは、東京在住の柴田ご夫妻より佐賀県立九州陶磁文化館へ寄贈された、江戸時代の有田焼の数々です。平成2年より、「有田焼が生まれた土地に帰してあげよう」と寄贈されているこのコレクションは、江戸時代の有田磁器を体系的にまとめた質の高いコレクションとして注目されています。今回の展覧会では新たな寄贈品を含む1190点の圧倒的な数の作品が展示されていました。

テープカット 初日ということで関係者や一般客も含め150人程の人たちで、文化館内で開会式が執り行われました。関係者による挨拶が行われましたが、先ごろお亡くなりになられた十三代今泉今右衛門氏もこの展覧会を楽しみになさっていたとのことで、柴田ご夫妻も目頭を押さえながら挨拶をなさっていました。
家田さんによる説明に聞き入ってその後、会場入り口にてテープカット。会場の皆さんは待ってましたとばかりに、作品の並ぶ展示室に足を進められていました。今回の展示内容は「17世紀の有田磁器の歴史的な変遷と各年代の特徴」をテーマにした展示構成で、当館学芸課資料係長の家田さんによる展示作品を見ながらの説明会も開催されました。まずは、家田さんのお話を伺いながら作品を見てみることにしました。

瑠璃釉染付菊唐草文小碗 1190点もの作品を時代別に6つのコーナーに分けて展示されていました。まずは第一のコーナー「1.有田磁器のあけぼの(1610〜1630年代)」では、肥前地区にて磁器生産が始まった頃の数少ない伝世品が展示。ケースにはたくさんの作品が並ぶこのころの磁器はまだ陶器と一緒に生産されていたのだそうです。作品も全体的に生地が厚めな感じです。この時代の作品として展示されていた「瑠璃釉染付菊唐花文小碗(1610〜1630年代)」は器面に唐草を呉須で描いて、その上に瑠璃釉という藍色の釉薬がかけられたものです。よく見かける「古伊万里」と呼ばれる作品と比べると藍色が少し濁った感じで洗練さはないのですが、力強く堂々とした魅力を感じます。

染付窓絵梅文五耳壺 「2.皿山改革と磁器生産の本格化(1630〜1640年代」のコーナーへ入ると、様々な装飾・器形の初期伊万里と呼ばれる作品が並んでいました。最初に目に飛び込んできた「染付窓絵梅文五耳壺(1630〜1640年代)」は肩よりも胴部が丸く膨らんだ壺です。こういった形は1630〜1640年代の特徴のひとつだそうです。まだ「白く」はない素地にぽってりとした染付が施されており、先の小碗同様なぜか温かみを感じます。「この時代になってくると、藩の政策によって有田では磁器のみの生産を行うようになりました。また中国による陶磁器輸出が止まってしまうことで、国外の磁器需要も有田に集中するようになっていったのですよ。」と分かりやすく説明される家田さんの言葉に、みなさん頷いたりメモをとったりされながらも集中されているご様子。

色絵松人物文輪花大皿 次のコーナーへ入ると、それまでとは違う鮮やかな色絵の作品が出迎えてくれました。「3.めざましい技術革新(1640〜1660年代)」とされたこの時代は、それまでの朝鮮系の技術から中国系の磁器生産技術へ転換するという技術革新が起こったのだそうです。具体的には色絵技術のはじまりや、焼成中の製品底部の垂れを防ぐ、ハリ支えという方法が発明され、中国的な高台径の広い皿を作ることが可能になったそうです。「このコーナーの見所のひとつですよ」と家田さんが示されたケース群にあった作品「色絵松人物文輪花大皿(1640年代)」は繊細さをかんじさせる器形に、細かな色絵文様が施されています。これは祥瑞手(しょんずいで)と呼ばれる様式で中国的なデザインのものです。恥ずかしながら初めは「しょんずいで」の漢字がピンとこず、後で家田さんに教えていただきました。
色絵牡丹鳥文大皿・青手同じケース群にあった「色絵牡丹鳥文大皿・青手(1650年代)」は、直径が40cm近くもある大皿で、黄色・緑・紫といった濃い色の文様が見る人をひきつけます。この作品の口縁は白地部分が残されていますが、これは青手でも特に古いものに見られる特徴なのだそうです。
また、この時代になってくると糸切り成形かはじまり、変形皿も生産されるようになります。染付花唐草文菱形皿ところが変形皿は色々あっても、どれが糸切り細工なのか型押しなのかわかりません。質問をしたところ、高台が円状のものがろくろをひいた後に型押ししたものの場合が多く、高台がひし形などの形をしていれば糸切り細工と見ていいとのことでした。なるほどと思いながらもう一度自分で確認しながら作品を見て回りました。

お茶で一息くつろぐみなさn 会場では開会記念とのことでお茶会も催されており、見学を終えた方がほっと一息されていました。遠くは北海道や関東地区からいらっしゃった方も。「毎回楽しみにしている」という地元の男性の方も今回の展覧会にも満足そうでした。次回は残りのコーナーをご紹介していきます。

追悼コーナーでは今右衛門さんの代表作が展示■取材雑記
 館内の第五展示室には、十三代今泉今右衛門さんの追悼コーナーを設けてありました。6点の作品が展示されていましたが、今右衛門さんの代表的な技法の作品で、見ごたえ十分でした。ご冥福をお祈りいたします。

●佐賀県立九州陶磁文化館
【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】
【休館日】柴田コレクション展会期中は無休です(通常月曜休館)