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やきものにみる文様VOL.34 地図文様
▲染付世界地図大皿
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵


 肥前磁器では、地図文様は江戸時代後期になって出現し、大皿の文様として用いられています。地図文は、ほとんどが染付で描かれていますが、まれに染付と色絵で描かれたものも見られます。
 地図文様が描かれやた大皿は、日本を中心として東半球や東洋を描いた「世界地図文大皿」と、日本列島を描き筑前国や肥前国といった国名が記された「日本地図文大皿」の2種類に大きく分けられ、さらに日本地図から九州だけを抽出して描いた「九州地図文大皿」もあります。

 「日本地図文大皿」の器形は円形の他に、輪花・隅丸長方形・分銅形があり変化に富んでいますが、描かれている地図文はほぼ同じものであり、同一の手本(地図)から写されたものと考えられます。
 写真の大皿は「世界地図文大皿」で、高台内の「本朝天保年製」銘から江戸時代の天保年間に制作されたことが判ります。日本を中心に中国大陸・朝鮮半島・アメリカ大陸などが描かれ、海はダミ塗りされた波文で表現されています。

 「大清」「朝鮮」「ヲロシア」「イギリス」などの国名や「北アメリカ」「欧遍巴」などの地名と日本からの距離が「日本ヨリ海上里数表」で記されています。「女人国」「長人国」など実在しない国も記されているのが特徴であり、鎖国体制下にあった当時の日本人の世界観がわかる興味深い資料です。
 当時、通商を求めて外国船が日本近海にたびたび出没しており、このような世情を反映して、世界地図が大皿の図案として描かれたものと思われます。
 色々な料理がのせられたこの大皿を囲んで人々が海外への憧れに思いをはせていたかもしれません。
(森田孝志)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.41号より(平成17年発行)

■写真…染付世界地図大皿
C佐賀県立九州陶磁文化館館
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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