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やきものにみる文様VOL.29 ケンタウロス模様




  皿の中央部に3人(頭)の半人半馬が描かれている。左のそれは、右手にむちのような剣をかざして持ち、頭から上半身にかけて熊とおもわれる毛皮をまとっている。そして他の上半身裸の2人(頭)に襲いかかろうとする。中央のは上半身は裸で、右手にこん棒を持って防戦するように身構えている。右のも上半身は裸であるが素手であり、左のものから逃れようとしている。どうやら何か争っているようだ。

 ケンタウロスは広辞苑によると「ギリシア神話で、上半身は人体、下半身は馬の形の怪物。テッサリアのぺリオン山に住む。ラピテス族と争って滅ぼされたという。センタウル。」とある。テッサリアの伝説によれば、ラピタイ族の王ペオリトオスとヒッポダメイアとの婚礼の宴の席で、酒に酔ったケンタウロス族のエウリュテイオンが狼藉をはたらいて花嫁を奪おうとした。このことが原因でケンタウロス族とラピタイ族の戦(ケンタウロマキア)が生じた。

 この伝説は古代ローマ詩人オウィディウスの『変身物語(メタモルフォセス)』にも記され、ケンタウロマキアは、ギリシア美術古典期(B.C.6〜5世紀)には神殿装飾に好んで採用される美術主題であったといわれる。この図はおそらくオランダ連合東インド会社によってもたらされ、このような図柄の皿を作ってほしいと注文され、それに応えて制作されたものであろう。鎖国時代にあって、有田の絵付職人たちは、ヨーロッパの絵文様をいちはやく知ることができ、そしてそれを写すことができた。

(吉永陽三)
 
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.36号より(平成12年発行)

■写真…色絵ケンタウロス文皿
C佐賀県立九州陶磁文化館館
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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