トップ >> やきものコラムセラミック九州 >> vol.28 松文様

やきものにみる文様VOL.28 松文様(まつもんよう)




 日本には松の文様は多く、若松や浜松、松竹梅、松に鶴、松に富士、根引きの松などその表され方にはさまざまなものがある。このような植物文様は、植物のその姿に美しさを見いだしただけでなく、生命力や再生力に、神的なものを感じたからであろう。とりわけ、日本には古来から、松は神霊がやどるものとの信仰があった。その代表的なあらわれが、正月の門松であろう。神仏が松に降臨するという信仰によるものである、
 
 松は、常緑であることから、長寿や不変の愛情の象徴として語られ、めでたいものとされる。これは文学では古くから定着しており、和歌では「住江(すみのえ)の松」は長寿をあらわし、「高砂(たかさご)の松」や「末の松山」は変わらぬ愛情をあらわしている。

 また若松や根引きの松は、松の成長の早さや強い生命力にあやかりたいという願いがこめられている。これらの意匠は肥前磁器にはよくみられる。とくに根引きの松は鍋島藩窯のあった伊万里大川内山の製品に、現在でもよく見られる意匠である。

 松竹梅が環状にあらわされる意匠は、肥前磁器の皿や猪口などの見込にさかんにほどこされた。この文様は粗製のものではくずされてしまい、松竹梅であることがわかりにくいものも多い。松竹梅も縁起のよいものとして吉祥の文様である。これは酷寒に耐えてなお青い松と竹、春一番に咲く梅を高潔なものとした中国の歳寒三友の思想が日本にもたらされらものである。


(藤原友子)
 
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.35号より(平成11年発行)

■写真…色絵松竹梅窓絵山水文輪花皿
C佐賀県立九州陶磁文化館館(柴田夫妻コレクション)
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます