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やきものにみる文様VOL.10 梅鉢文様(うめばちもんよう)


 ウメはバラ科の落葉高木。中国原産で奈良時代以前にわが国に渡来したといわれる。早春、葉に先立って香りのよい五弁花が咲く。色は白、紅、淡黄などがあり、八重咲きもある。万葉集5・818「春さればまづ咲く宿の烏梅<ウメ>の花ひとり見つつや春日(はるひ)くらさむ<山上憶良>」のように、万葉集にはウメの花が114首もよまれているという。梅鉢は単弁の梅花を正面からみて図案化した紋章の名である。円を中心に、それより少し大きい円を5個ならべたものを「星梅鉢(ほしうめばち)」とよび、これが梅鉢文様の基本形である。写真は「色絵沢瀉(おもだか)文徳利」(高さ27.6cm、館蔵品)。

1660年代の有田皿山の製品である。下ぶくれの胴にのびやかな筆致で沢瀉文様を描いているが、とくに注目されるのは、その背景に描かれている文様で、松葉のような細い線状文を地として、緑と黄でいろどられた梅鉢文様を散りばめている。東京国立博物館所蔵の「色絵雲文手付水注」(高24.7cm)には、同様の線状地に梅鉢文を背景に雲文を描いている。それには「1671」と陰刻銘のある銀製の蓋がついていて、この作品が寛文11年(1671)以前には有田皿山で製作され、オランダ東インド会社によってヨーロッパに輸出された作品と考えられている。

同様の背景地文をもつものは他に、壺、茶筅(ちゃせん)形徳利、角徳利、角形手付銚子などが知られている。
 18世紀前半の有田皿山の作品で、皿や鉢の内面中央に、この梅鉢文を一つ描いているものがある。それには各弁に十字状の付属物がついていて、それをとくに五弁花文とよびならわしている。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.13号より(昭和61年発行)

■写真…色絵沢瀉(おもだか)文瓶
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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