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やきものにみる文様VOL.7 網目文様(あみめもんよう)
 網は動詞「編む」の連用形の名詞化で、糸、縄などで目をあらく編んだもの。魚や鳥獣を獲るための道具である。網目文様は蛇行曲線が向いあって相接した文様で、早くも縄文時代早期の土器に見ることができる。彫刻を施した丸棒を回転押捺して網目文様をあらわした回転押型文土器で、長岡市科学博物館蔵の新潟県中魚沼郡津南町卯ノ木遺跡出土の尖底深鉢が好例である。鎌倉時代の長宝寺多宝塔須弥壇にも見られるが、江戸時代の浴衣(ゆかた)・木綿裂(ぎれ)・型染(かたぞめ)・唐織(からおり)・縫箔(ぬいはく)・小袖(こそで)・錦裂(にしきぎれ)・麻裂(あさぎれ)・繻珍裂(しゅちんぎれ)・摺箔(すりはく)などの染織品または燈籠(とうろう)・欄間(らんま)・蒔絵(まきえ)・刀の鍔(つば)などの工芸品の背景地の装飾文様として多く見られる。中国明時代末期に景徳鎮の民窯でつくられた古染付(こそめつけ)に網目文様の上に魚を配した碗や皿があるが、これらが日本に舶載され、それを手本として17世紀中頃には有田皿山の各地で写真にみるような染付網目文碗が産出された。また18世紀になると二重線による網目文様があらわれる。徳利や大皿の全面に網目を描く場合は曲面に応じて網目の大きさを変えなければならない。いかにも涼しげな夏向きの文様であり、今でも愛用されている。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.10号より(昭和59年発行)

■写真…染付網目文碗
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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