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やきものにみる文様VOL.4 毘沙門亀甲文様


 六角形(亀甲)を、下に二つ、上に一つつなぎあわせたいわゆる三盛亀甲(みつもりきっこう)を一つの単位とした連続文様。すなわち三個の亀甲形を一点を中心に組み合わせ、その外側の輪郭を基本形とした連続文様である。中国では宋時代の文様として鎖錦(さきん)という名で知られ、唐の作品といわれる京都教王護国寺の国宝兜跋毘沙門天像(とばつびしゃもんてんぞう)の甲冑にはこの文様が彫り出されている。毘沙門天は四天王・十二天の一つ。多聞天(たもんてん)とも呼ばれる。須弥山(しゅみせん)の中腹にあって北方を守護し多くの夜叉(やしゃ)、羅刹(らせつ)を統率するとともに仏法を守護し福徳を受ける善神。その形像は怒りの相を表わし、甲冑を着け、片手に宝塔、片手に宝棒または戟を持つ。わが国では七福神の一つとする。この毘沙門天が着用している甲冑の文様が多く亀甲形であるためこの名が生まれた。陶磁器では中国明時代の祥瑞(しょんずい)、呉須赤絵、金襴手の背景地文にみられ、我国では鍋島、古九谷などの背景地文として用いられている。

 この作品は毘沙門亀甲の文様の背景に同文様をうめるという非常に手のこんだものである。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.4号より(昭和57年発行)

■写真…色鍋島毘沙門亀甲桐文皿
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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