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行ってきたよ有田陶器市
―スタッフの陶器市考察― 第103回有田陶器市総括
 「さあっ、準備万端。今年も有田陶器市を隈なく攻略するぞ」と意気込んで取材にのぞみましたが、年々からだがしんどくなってきました(トホホ)。「定点観測」を口実に、用意されている椅子に座り込むことしばしば。それでも習性でしょうか、目と耳は周りの動向には敏感に反応してしまいます。取材を終えてみて、今年の第103回有田陶器市は大きな変化をあちこちに見て取ることができました。
ところで、期間中の人出は112万人(昨年度109万人)と発表されていますが、その内容やいかに? そこで、今回の第103回有田陶器市を大胆にもうまか陶流で総括してみたいと思います。
 先ず、今回の有田陶器市の特徴を挙げると、
1、 日ごとの客層パターンが変化していた。
2、 食べ物の出店が増えていた。
3、 有名・老舗窯元の店舗は不振?
4、 価格交渉(値切り)風景が少なかった。
5、 機能を謳う商品が増えていた。

といったところでしょうか。では、上に挙げましたそれぞれの特徴を事例も紹介しながら、うまか陶流総括をしてみます。
1、 日ごとの客層パターンが変化していた。
 昨年までの有田陶器市では、初日(4/29)前後にはリピーターを含むやきもの好きのファンの方々が多数いらっしゃっていましたが、今回は思いの外少ないようでした。通りを闊歩される戦闘モードの、「さあ、買うわよ!」と聞こえんばかりの殺気(失礼)を感じさせるファンの姿が少ない! 
 特に買い物最強コンビの「母娘」の姿が昨年に引き続き減少、逆にツアー客が目立っていたようです。このファン層の減少が3の不振に繋がっているようです。さあ、このファン層はどこに行かれたのでしょうか? 
 メディアでは海外組みなどのレジャーが増加と報道していましたが、この影響も確かにあったようです。GW後半の3日からの連休にはある程度回復しファンの方々も訪れていましたが、それでも昨年には及ばなかったという気がします。
 それと、一昨年あたりから増えてきたレジャー客にも変化があったようです。ツアー以外のレジャー客の特徴は、昨年までは同世代グループが目立っていましたが、今回は何故かファミリー層が目立っていたようです。小さい子ども連れのファミリーやお年寄り夫婦の姿が多かったようです。同世代グループの場合はどちらかというと「お祭り」という意識でしょうが、ファミリー層は「近場のレジャー」という意識だろうと思われます。有田陶器市のブランドイメージが「お祭り」から「近場のレジャー」に変化しつつあるのではないでしょうか。
2、 食べ物の出店が増えていた。
 うまか陶でも「食べるところが少ない!」と主張してきましたし、また、たくさんのファンの方々も同様の意見を出されていました。有田陶器市の楽しさ・満足を演出する一つの方法として「食」は欠かせないものです。殊に有田陶器市の会場はとにかく歩かなければならないので、要所要所に食べるところは不可欠でした。
 やっと今年はファンの方々の要望が実を結び、いろんな食べ処ができていました。今までは、既存店に加えうどん、カレー、やきとり、梅が枝餅、アイスクリームを出す出店ぐらいでしたが、今年は有田名物「ごどうふ」が随所に出現! 
また有田鶏のから揚げやカレーなども。他地域からの初参加として、佐賀県神埼市名物「そうめん」、長崎県からの「佐世保バーガー」「五島うどん」などなど。そして、今回有田町を含めた近隣地域から新たな開発食材として「てんてん物語」というおやきが販売されていました。
 こうなると訪れる者としては楽しくなってきます。そして欲望は膨らみ、来年は「あの有名な○○店を誘致して」という要望を出したりして…(笑)。しかし、残念だったのはこれらの出店は現場に行って初めて知ったものが大半でした。できればこういう出店の情報も先に出してあれば、もっと人を呼べたでしょうし、来た人の満足度をもっとアップさせることができたと思います。
3、 有名・老舗窯元の店舗は不振?
 ショッキングなフレーズをつけてしまい申し訳ないのですが、私どもも驚きでした。昨年までは大勢のお客さんが有名・老舗窯元に集まり、身動きが取れないこともしばしばでしたが、今年は「えっ、どうしたの?」と首を捻るばかりでした。
先にやきものファンの数が少なかったと書きましたが、ファンの傾向として窯元志向が強いのでこういう結果になったのでしょう。ファンの方の声を拾ってみると「楽しくない!」と、また「いいものがない!」という厳しい声も。このファンの方々の琴線に触れるものが少なかったのでしょう。新商品もあちこちに出されてはいたのですが、このファンの方々の買い物意欲を刺激するものがなかったのでしょうか?
 関東や関西などのデパートでは有田焼のコーナーが激減しているそうですが、これもファン層減少の一つの要因と考えてもいいと思います。有田焼自体が一般の人の目に触れる機会が少なくなってしまい、人々の意識から有田焼が薄らいできていることは容易に想像できます。ファンの琴線に触れる商品開発や企画をしていただいて、来年の有田陶器市には、いつもの賑わいを回復して欲しいものです。
4、 価格交渉(値切り)風景が少なかった。
 できるだけ安く買いたい」というファンの心理があるからこそ交渉が発生するわけですが、今年の客層の特徴としてレジャー・ツアー客が目立ち、「高いわねー」という言葉を残して次の店へ行かれるという光景があちこちで。
いわゆる「お土産」としてのやきものという見方をされる方々が多かったのでしょう。ですから予算に合わなければ別の「お土産」をと考えられるのは当然だと思います。日頃は観光客が少ない有田でお土産品を作るというのは難しい面もありはするのですが、観光有田を推進するのであれば対策を考えねばならないところでしょう。
5、機能を謳う商品が増えていた。
 一昨年の有田陶器市では「究極のラーメン鉢」がお目見えし、昨年の有田陶器市では焼酎の香りを楽しむ「香酒盃」が販売されていました。
さて今年はと、あちこちのぞいて見るといろんな機能商品が新たに登場していました。その中でも人気があったものは、昨年の秋の陶器市でお目見えした焼酎の味をまろやかにする「至高の焼酎グラス」、セラミックのコーヒーフィルター、短時間で簡単にだしが取れる「だしポット」、お茶・紅茶・コーヒー用の「SALONE」「SABOU」のラインアップなど。しかし「究極のラーメン鉢」ほどの盛り上がりが感じられなかったようです。あの時は色んなメディアが取り上げていたので、「じゃ、ちょっと見てみようか」といった好奇心が先に広がって話題を呼びましたが、今年は事前の情報が少なすぎたようです。
 さらに、これらの機能商品の開発・販売元が消費者には分りづらい一面もあるようです。これがある特定のメーカーなり販売店が毎年新商品を出すのであれば、消費者の期待感も盛り上がりブランド力がつくのでしょうが、だれが開発したのか分りづらいということは消費者の意識には残りにくくなってしまいがちです。そして、機能を謳う商品の特性として、消費者は機能に満足すれば機能以外のものをあまり期待しないようです。例えば「あそこの窯元の商品を揃えたい」と言ってもらえるファンを育てるモノにはなりづらいのではないでしょうか。
 こういった幾つかの課題を抱えた有田での商品開発ではあるのですが、やはり見る側の者にとって新商品はワクワクするものですし、息の長いヒット商品をと願っています。
 話題を変えて、会場内の交通の問題について。毎年うまか陶でも取り上げていますが、今年はシャトルバスの利便性が図られていました。便数が増え、歩行者の安全を図るためにメイン通りのバスの運行を中止されたりと手を打たれて、それなりの効果があったようです。
 しかし思わぬクレームが発生していたようです。「バスが来ない」「乗れない」「このバスはどこに行くの」などなど耳にした声は多数ありました。実際に私たちも有田駅〜卸団地、泉山〜卸団地のシャトルバスに乗ってみましたが、予定の時刻に来ないばかりか、1時間たってやっと来ても並んでいる人の一部しか乗れないとなっては不満が噴出するのは当然。私の後ろに並んでいる人たちはツアー客だったようで、「帰りのバスに間に合うかしら? あまり買い物できないじゃない!」と。
 私どももつい「歩いたほうが早かった」とぼやきが出てしまいました。これは大きなチャンスロスです。もしバスが遅れなかったら、バスに乗っていた人たちが1,000円多く買い物をしてくれたかも知れません。来年はこのバス便のよりよい改善をしていただきたいと願っています。
 また、案内・告知についても毎年取り上げていますが、改善が難しいのでしょうか? 
初めて有田を訪れた人にとっては「不親切な町だな」という印象を与えてしまいかねません。これは有田陶器市の時に限ったことではなく、普段の観光客にとっても分りづらい所が多い町です。色々なサインや案内板を作り、「○○にはこう行けばいいのか」と分るようにしていただくとか、案内の人をもっと増やしほしいものです。有田陶器市の時には様々な飾りやテントなどがあり、余計に分りづらくなっていますので、陶器市MAPがあっても目的地は探し出せないものです。これも大きなチャンスロスです。
 近年、今年ほど客層の変化を感じた有田陶器市はありませんでした。先に挙げた特徴も、客層の変化がもたらした結果であったようです。レジャーやツアーの新規客が増えたことは、有田陶器市の知名度がアップしたということであり評価しています。
 しかし、ファン層の減少はファンへの満足・期待感を与え切れなかった結果であり、「有田陶器市」のブランド力が低下しつつあるのではと危惧しています。これは昨年の有田陶器市で表面化し、今年は更に顕著化してしまいました。来年の有田陶器市の時に頑張っても時すでに遅そしです。明日からでもファンに向けての、ファンの心をくすぐる商品開発や企画、ファンに届くメッセージを開始してもらいたいものです。そうすれば来年の有田陶器市では町を闊歩するファンの数が増えてくると確信します。

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