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絵で見るやきものの世界
描かれた職人たち
山海名産尽・肥前国伊万里焼
山海名産尽
肥前国伊万里焼

歌川国芳
C佐賀県立博物館所蔵
 伊万里焼の職人達を描いたこの絵は、江戸の浮世絵作家、歌川国芳(1797〜1861)によって制作されました。手前ではもうもうと燃える窯に薪をくべる職人と、用心深く器を運ぶ人がいます。窯から立ち上る恐ろしげな黒煙は、国芳独特の怪奇趣味が見受けられます。その横には差し入れを持ってきた娘が描かれています。この娘は窯場にはふさわしくない派手な振袖姿ですが、これは娯楽性を求められた浮世絵の演出のひとつでしょう。遠くには笠をかぶり、にないて棒を担いだ人が何かを運んでいるようです。しかしこの作者の国芳が伊万里を訪れたという記録はありません。この時代には各地の名産物を描いたものが流行っていたそうで、1799年刊行の「山海名産図会」に掲載されている伊万里焼の生産場面から窯の前にいる職人と器を運んでいる職人を、国芳が引用したとわかっています。
 また遠くに見える山の中央付近には「大里」左手には「山代」と伊万里の地名が書いてあります。この位置関係から、これは御用窯のあった大川内山を描いていると考えられます。しかし伊万里を特徴づける海が見えないので、国芳が風景を何を基にして描いたのか不明です。

その2
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