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やきものが登場する物語
Vol.21
青磁砧
(せいじきぬた)
発行所
講談社文芸文庫
著者
芝木好子 
定価
1200円
ジャンル
小説

 芝木好子の数ある短篇中でも秀作として評価の高い「青磁砧」は、陶磁器に魅せられた父と娘の成長の姿をとおして、年頃の娘を持つ父親の心情を見事に描いた情感のある小説です。

 隆吉の娘である須恵子は美術関係の出版社で陶磁器全集の仕事に携わっており、陶磁器への関心も父親ゆずりに次第に高まっていきます。
 そのような中、彼女は「青磁」を焼く高能次郎という作家と出会います。彼は、「汝官窯の青磁を超える」という強い意志をもち、青磁の美を掌握し、さらに深めるために、社会から隔絶した生活を送っていました。

 隆吉は「青磁」に魅せられた須恵子の情愛が、「青磁」という焼き物から高能次郎という作家への関心へと移り変っていくのを見逃しませんでした。彼は父親として、娘に対して厳しい態度をとります。

 この小説が面白いのは、娘の恋愛に直面する父親の心情が仔細に描かれているところです。彼女が学生のとき、付き合っていた男のアパートを突然訪れて、男の普段の生活を暴くところなど、男の不憫さと父親のいやらしさがよく伝わってきます。

 高能次郎への思いが断ち切れたあと、物語は須恵子と小堀という男の淡い恋愛が始まるところで終ります。須恵子と父親の会話、父親から娘へのまなざしが、清々しい凛とした読後感を与えてくれます。
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